ソーシャルスキルの大切さ~言葉よりも先に手が出てしまう子~

こんにちは。
保育・療育専門家 コノアス合同会社 代表 柏木です。

みなさんは、日々、子ども達を支援したり、子育てをしたりする中で、次のような悩みをもっていませんか?

「友達とトラブルばかり起こす…。困ったなぁ。」
「カッとなるとすぐに手が出ちゃう。いわゆる、キレやすい子だと思う。」
「他の子に怪我をさせてばかりいる。何度怒っても効果が感じられない。」

言葉よりも先に手が出てしまう、乱暴な子

保育園や放課後デイ・サービス、家庭でよく見られるシーンですよね。

ですが、ちょっと待ってください。

本当にその子の性格や障害特性上の問題なのでしょうか?言い換えると、もっと私たちにできることはないのでしょうか?

今日はその辺りを深堀していきます。

ぜひ、最後までお付き合いくださいね☆

目次

こんな子いるかな?

子どもをよく観察しよう

こんな子はいないでしょうか?

・友達が使っている玩具を、何も言わずに奪い取る。
・友達から文句を言われたり、貸してもらえないと叩いたりする。

いますよね

結果、みんなから乱暴だと思われて、避けられたりする…。

しかし、子どもをよく観察すると、あることに気がつきます。

上記のような不適応行動は、常に出ているわけではないのです。

例えば、「関わる支援者」や「場面」、「活動状況」によって、乱暴な面が出てしまったり、出なかったりします。
その子なりに落ち着いている場面もあるのですが、つい乱暴な所ばかりが目立ってしまうのです。

昔であれば、保育園の先生は、

〇〇くんは、乱暴で困ります。お母さんからもよく言い聞かせて下さい。

と言えば済んだかもしれません。

しかし、これからの時代は

・お母さんやお父さんも子どもの将来を心配して困っている
・子ども自身が、気持ちや行動をコントロールできずに困っている

このような認識が必要になります。

ソーシャルスキルとは?

言葉よりも先に手が出てしまう、乱暴な子

この多くは、対人関係スキル(ソーシャルスキル)につまずきを抱えています

スキルとは技術のことであり、知識ではありません。

したがって、「もう2度としないでね!! こうすればよかったんだよ!!」「はい。気をつけます。こうすればよかったんだ…。」 という叱責や反省といった、その場限りの指導は知識を増やすには良いかもしれませんが、あまり効力がないことが知られています。

つまり、「知っている(知識)」と「使える(技術)」では、大きな違いがあるのです。

スキルを向上させるには、トレーニングが必要になります。

言い換えると、実際に起こり得る場面を想定して、それを乗り越える練習をしなければ行動は変容しづらいということです。

大抵の子供たちは、日常の生活経験の中で、周りの大人や友達の様子を見ながら自然と身につけることができます。
しかし、見よう見まねでは学びきれない子どももいます。
そこで、トラブルが起きる前にスキルを身につけておこうというわけです。

ソーシャルトレーニングの必要性~行動のレパートリーの少なさ~

トラブルの原因は、行動レパートリーの少なさ

言葉より先に手が出てしまう、乱暴な子。

子どもの行動を観察すると「行動のレパートリー」が、もの凄く少ないことに気づかされます

自分の思い通りにいかない、今までの行動パターンでは上手くいかないに状況に遭遇したとき、乱暴な子というのは、自分の行動を修正し、再度試みるということができないのです。

自分の行動を修正する」や「別のやり方で取り組む」、「もう一度試みる」は、複数の行動レパートリーをもっているからこそ発揮できます。

しかし、乱暴な子は、「乱暴をして解決する」という行動のレパートリーしかないために、そのカードばかりに頼ってしまうのです。

結果、他のレパートリーはなかなか増えず、「乱暴な子」の烙印が押されたままの状態ということになります。

ソーシャルスキルの第一人者・佐藤陽子先生(宮崎大学)によれば、 友人関係作りがどんなに上手な子も、2回に1回は失敗しているそうです。

では 友人関係作りの上手な子と苦手な子は、どこが違うのか?

それは、「行動レパートリー」の豊富さです。

「グループに入りたいけど、難しそうだな…。」

そんなとき、以下のような行動のレパートリーが用意されているのです。

(1)突然入ろうとせず、周囲をウロウロしながら、タイミングを見計らってついていく。
(2)遊びの終わりや切れ目、笑いが起きた時に仲間に入れてと伝える。
(3)上記2つでもダメな場合は、前に回り込んだり、遊んでいる友達の肩をトントンと叩いたりして注意を向けさせる。
(4)「次は遊びたい。」「○○ちゃんと遊ぶの予約だよ。」と、後から加わることを予告する。
(5)今は仲間に入るのは難しいと空気を読んで、他のグループに行く。

友人関係作りが上手い子は、こんなに「行動のレパートリー」を持っているのです。

このとき、行動のレパートリーが少ない乱暴な子は、「拒否された。」「無視された。」と、感じてしまいます。

せっかく、勇気をだして「入れて。」と話しかけたのに、それが拒否されたと感じたら…。

唯一ある「行動レパートリー」、<乱暴をして解決する>のカードを出してしまうのです。

大切なのは、乱暴した行動を叱ることではなく、乱暴しなくても済む「行動レパートリー」を増やすことです。

そのために、ソーシャルトレーニングが必要なのです。

まとめ

ソーシャルスキル(対人関係)は、トレーニングによってある程度は向上します

しかし、実際の場面や「友人関係作りで上手くいった。」などの成功経験がなければ、自信をもって使えるようにはなりません。

だからこそ、保育園やデイ・サービスなどで「ソーシャルトレーニング」をすることが必要なのです。

そして、身につけた技術を育てると同時に、花を咲かせる場が「社会」や「学校」なのです。

一度身につけたソーシャルスキルはなくなりません。
子ども達が大人になっても活用できるものです。

柔軟な考え方やものの見方、行動。ソーシャルスキルは一生ものです。
ぜひ、明日から取り組んでいきましょう。

子ども達の笑顔のために☆

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