こんにちは。
保育・療育専門家 コノアス合同会社 代表 柏木です。
昨今、メディアでは「グレーゾーン」や「発達障害」、「ADHD」などのワードを頻繁に見かけます。
特別な支援を要する子ども達が話題になるのは良いことなのですが、ワードだけが独り歩きすることが心配ですね。
みなさんは、これらのワードをきちんと説明できますか?
「なんとなくは説明できるけど…。自信はないなぁ。」
「発達障害とグレーゾーンってどう違うの?」
「グレーゾーンって知らないんだけど。」
上記のような人が意外と多いのではないでしょうか?
そこで今回は「グレーゾーン」に焦点を当てて、お話ししたいと思います。
記事を最後まで読んで頂けると、「発達障害」や「グレーゾーン」について理解が深まり、正しく説明できるようになると思います。
また、グレーゾーンの事例も紹介しますので、実際の子育てや保育現場でも役に立つと思います。
ぜひ最後まで読んで下さいね。
発達障害について
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達が通常と異なるため、物事の見方や考え方に偏りがある障害で、主に3つに分類されます。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 学習障害、限局性学習症(LD)
上記のように分類はされますが、どれも共通しているのは「生きづらさ」を感じている点です。
発達障害があると、対人関係が上手くいかなかったり、環境の変化に適応できないこと多く、社会参加に苦労します。
また、発達障害は見た目が一般の子どもと変わらないため、不適応行動があると「わがまま」や「不真面目」、「親の教育が悪い」と周囲に思われてしまうことがあります。
いたって本人は真面目に取り組んでいるので、これほど悲しいことはありません。
発達障害は周囲との兼ね合いや環境条件などによって、その特性が出る強さや頻度が変化します。
つまり、子どもの性格をよく理解して、それぞれの障害特性に合った支援や環境整備を心がけることで、子どもは最大限の力を発揮でき、不適応行動が減少していくのです。
そうなると、子どもの自己肯定感は高まり、自分らしさを感じながら楽しく毎日を過ごすことができます。
ぜひ、支援者は子どもが「毎日楽しいな。」と思えるように支援をしていきましょう。
学習障害については、こちらの記事でご紹介しています。是非参考にしてみてください。
グレーゾーンってなに?
初めにお伝えしたいことは、メディアでいわれている「グレーゾーン」というのは、医学的な診断名ではありません。グレーゾーンというのは、「発達障害の特性は見られるが、診断の基準には至らない」状態の通称なのです。
他には、保育のような社会的な場で不適応行動が見られるものの、未受診の子どもも含まれます。
しかし、診断は受けていないものの、グレーゾーンであり、発達障害の傾向はあるわけです。
当然、上手くいくはずもなく、大きな生きづらさを抱えてしまうことになります。
ここが、グレーゾーンの最大の課題なのです。
事例~4歳児・男の子・Aくんの場合~
グレーゾーンで、ADHDの傾向がある子どもは一定数います。
そんな子ども達に共通しているのが、「集中すること」「じっとしていること」の苦手さです。
集中力が続かず、「先生の話を聞けない」や「飽きっぽい」、「活動中に他のことをしてしまう」などの特徴があります。
こんな例をあげてみましょう。
- Aくん
- 男の子
- 4歳児
- グレーゾーン(ADHD傾向あり)
<みんなの活動についていけないA君~お昼寝前の時間~>
保育園のお昼寝前の時間。
みんなパジャマに着替えて、寝る前の「絵本の読み聞かせ」の時間です。
保育士は「絵本の時間です。みんな集まってー。」と声をかけました。
パジャマに着替えた子ども達から順に、保育士の周りに集まります。
すると、一人…。
なんと、パジャマに着替えていない…。
保育士の「集まってー。」という話も聞いていない様子です。
他の子が集まっているのにも関わらず、空気を読まない強靭なメンタルを感じさせます。
保育士から声をかけられて、ようやく着替えを済ませて集合しました。
しかし、Aくんは保育士が絵本を読み始めても、ずっとそわそわしています。
全く絵本に集中していない様子です。
挙句に、絵本の読み聞かせをきちんと聞いている子に話しかけて笑いだしています。
そうなると、周囲にも悪影響を及ぼし始め…。
最後には、保育士から、「いい加減にしなさい!!」と怒られてしまいました。
さて、保育士はどのように接すればよかったのでしょうか?
着替えの始めと終わりの時間を明確にする
この場面での課題は、「指示の曖昧さ」です。
・何となくみんな着替えだして、何となく終わっている。
・そのうち保育士が「集まってー。」と声をかけることで輪になる。
グレーゾーンの子どもは、「曖昧」や「なんとなく」、「暗黙の了解」などを苦手とします。
つまり、目に見えない曖昧な指示というのは、耳に入ってこないのです。
では、どのような指示が良かったのでしょうか。
例えば、「今から着替えの時間。」や「〇時までに着替える。」、「〇時になったら集合して、みんなで絵本を見る。」など、活動の始めと終わりや、次の活動を明確にすれば良かったのです。
「指示は明確で簡潔」が基本であり、グレーゾーンの子どもには「4W1H」をしっかりと伝えるようにしましょう。
4W1Hとは、
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰と)
- What(なにを)
- How(どのように)
上記の情報が明確になると、子どもは自信をもって正しい行動をとります。
時間を意識して着替え、約束を明確にすることで友達とおしゃべりをせずに絵本を見られるようになるはずです。
間違っても、怒って行動を正すようなことはやめましょう。
また、指示を明確に伝えても駄目な場合は、イラストなどで約束や時間割を明確にするのも効果的です。
まとめ
今回は、「グレーゾーン」の子どもの特性を、具体例を混ぜて話しました。
みなさんに分かっていただきたいことは、本人が一番苦しんでいるということです。
決して、ふざけているわけでも怠けているわけでもないということ。
いずれも、「発達障害の傾向」を併せもっているグレーゾーンの特性であり、なおかつ診断をもらえずに生きづらさを抱えている子ども達です。
そこを理解した上で、子ども達に接していただけたらと思います。
明日を担う、子ども達の笑顔のために。
よりよい支援を目指していきましょう。
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