運筆について

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

就学前には「鉛筆の正しい握り方」や「塗り絵」、「ひらがな」などの練習をすると思います。
子ども達も、興味をもって自分の名前を書こうとしたりしますよね。

小学校に入学すると、「ひらがな」「カタカナ」の学習とともに 漢字の学習が始まります。
それから中学校卒業までの間に約1900文字の漢字を学習することになるのです。
9年間をかけて1900文字のパターンを見分けたり、書き分けたりする力が育つということになります。

小学校1年生では80字。
2年生では160字。
少なくとも低学年の間に240文字の漢字を覚えなければなりません。

「間違い探し」をイメージすると分かりやすいと思いますが、「文字の違い」に気づくためには、字全体の形を把握して部分的なポイントに着目する力が必要です。

裏を返すと、見た通りの文字を認識する力や見なくても思い出せる(再構成する)力が弱いとつまずきやすくなります。

例えば、「人」と「八」と「入」は、同じ要素の2つの線分でできています。

この字を書き分けるためには、「全体がどのように構成されているか。」、「部分的にどこに違いがあるか。」を瞬時に見分ける力が必要です。
ですので、字を書く以前に、見る力」や「形を捉える力・見分ける力」を育てる必要がある子もいるのです。

また、別のつまずきを抱えている子もいます。
この文字を書くにはこういう書き順だな。」という運動想起の力が弱かったり、「書く動作を実践する力」が弱かったりする場合も、字を書くことに苦手意識を感じることもあります。

文字のイメージはできるけど、「書く動作を実践する力が弱い」場合の疑似体験をしたい人は、利き手と反対の手に鉛筆を持って字を書いてみてください。

綺麗に書こうとしても、利き手ほどイメージの字が再現できない気持ちがわかると思います。

頭の中に文字のイメージがあっても、思った通りに文字が書けないということは、凄いフラストレーションになるのです。

目次

具体的な手立てで支援しよう

新しい文字を教えると、すぐに書ける子どもがいます。
一方で、書く際のポイントをいくら教えてもできない子どももいます。

支援者に気をつけてほしいことは、字を書くのが苦手な子たちに、「やればできる。」 「繰り返し取り組めばいい。」と、言葉掛けをするのは違うということです。

例えるなら、「森に行って花粉症に慣れろ。そうすれば治る。」と言っているようなものです。
そのような学習を続けていると、文字を書くことや先生に対しての苦手意識が高まってしまいます。

では、どうすればよいのか。

それは、「文字を書く」という行動のどこかにつまずきがあり、結果的に書けないのだと深く理解することです。

そこから、支援は始まります。

以下に、具体的な手立てを紹介します。

文字を言語化しよう

[1] 一画ごとに運筆の方向や想像しやすい形を言語化して書く

①短い棒線

➁とんがり お花

③ 土に入れた

画像引用:「日本語ネット

[2] 部首の組み合わせを言語化する

「お日様の右側は、青。」というように、部首の位置関係がわかるよう言語化して練習する。

➀お日様

➁ 青

③晴れ

画像引用:「日本語ネット

[3] 「漢字の成り立ちカード」

漢字の成り立ちの意味を示すことで、視覚的にイメージして学習する。

画像引用:「書くなび」「イラサポフリー/無料のイラスト素材集

[1]~[3]に共通しているのは、「文字(線)を想像しやすい」ということです。
そのための言語化であり、イラスト提示になります。
文字というのは、イメージできなければ書けないものであり、そこに対する支援というのは絶対に必要です。

それでも書けない場合は?

[1]~[3]の工夫をしても、文字を書くのが難しい子がいます。
そういった子のつまずきは、次のように予想されます。

肩や肘、手首、指先をどう動かせばよいのかイメージがわかない

端的にいうと、体の運動感覚(ギネステーゼ)が想像できないのです。
そのため、「僕は字が書けない。」と思い込んでしまうのです。

このような場合は、「正面から手を取って動かし方を教える」支援が有効になります。

理由は3つです。

  • 正しい文字を書く運動感覚を得やすい。
  • 鉛筆の握り方を修正できる。
  • 文字の始点と終点を把握できる。

なにより、先生が自分の正面で一生懸命教えてくれるのは、子どもにとって嬉しいものです。

まとめと補足

最後に、鉛筆の握り方について話して、終わりにしたいと思います。
昨今では、子どもだけではなく親も「正しい握り方」を知らないことが多いのです。

鉛筆の正しい握り方

鉛筆を正しく握るには、薬指と小指の働きが大切になります。

薬指と小指には支持機能があり、文字を書く際の「支える・握る・固定する」などの役割があるのです。
一方、親指と人差し指、中指には「つまむ・動かす・操作する」といった操作機能があります。
薬指と小指をしっかり握り込むと、親指・人差し指・中指を上手に操作することができ、字を綺麗に書くことができるのです。

定型発達の子や大人は、鉛筆やはさみ、箸などを使う際に、無意識・無自覚的に薬指や小指を握り込んでいると思います。
このことからも、鉛筆を正しく握るためには鉛筆を持つ3本の指以上に、それを支える薬指と小指が大切であることを実感できるのではないでしょうか。

対処療法になりますが、その都度、正しい鉛筆の握り方を教えることが大切です。

同時に、「うんてい」や「上り棒」「鉄棒」などの遊びを通して 、薬指と小指を使う経験を積むようにしましょう。

少しずつ文字が書けるようになることは、子どもにとって大きな喜びです。
文字が書ける」というスキルは、一生ものです。
生涯忘れることはありません。
そのために、私たちにできることを毎日していきたいものですね。

子どもたちの輝くアスのために。
コノアス合同会社 代表 柏木でした。

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