発達の特性~自閉スペクトラム症ってなに?~

こんにちは。

保育・療育専門家 コノアス合同会社 代表 柏木です。

自閉スペクトラム症の子どもの保護者様は、以下のような悩みをもっていませんか?

保護者A

自閉スペクトラム症ってなに? 分かりやすく説明してほしい。

保護者B

こだわりがすごく強くて…、困っている。

保護者C

一人では機嫌良く遊ぶけど、みんなと上手く遊べない。

そこで、今回は「自閉スペクトラム症の基本的な障害特性(幼児期)」を、事例を交えて解説していきます。

では、さっそく本題に入っていきましょう。

目次

自閉スペクトラム症~診断と統計~

自閉スペクトラム症の人たちに共通する特性は、

対人関係の難しさ」や「こだわりの強さ」、「想像力の欠如

です。

診断のきっかけは「1歳半」「3歳」「5歳」の乳幼児健康診査であることが多く、統計上は100人に1人が自閉スペクトラム症と診断されると言われています。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット

男の子に多い傾向があるのも特徴的です。

自閉スペクトラム症の特性の強さや現れ方は子どもによって違いがあります。

子どもの成長に伴い特性が弱くなることもありますが、先天的なものなので、完全に消えるというのは困難です。

自閉スペクトラム症の原因は不明ですが、生まれつきの脳機能によるものと考えられています。

自分の育て方が原因…。

親のしつけや家庭環境の問題…。

と悩む保護者がいますが、決してそうではありません。

自閉スペクトラム症の子どもの特徴

自閉スペクトラム症の子どもは、以下のような特徴が見られます。

  • 人や物事へのこだわりが強い
  • 友達とのコミュニケーションの取り方が独特
  • 相手の気持ちを想像したり、場の空気を読んだりするのが苦手

また、保育士からの臨機応変な指示を聞いたり、行動したりするのが苦手で、納得できないことに対してはパニック行動が表れることもあります。

「わがままな子」と思われがちですが、そうではなく「自閉スペクトラム症の特性の1つ」であるということを周囲は理解したいものです。

では、どう支援していけばいいのか。

具体的な事例を交えて解説していきますね。

事例~遊びを途中でやめられない/5歳児:Rくんの場合~

5歳児のR君は、ブロックで遊ぶのが大好きで、いつも自由時間の時は1人でロボットや基地を作っています。
熱中しだすと、本当に時間も友達の存在も忘れて作り続けています。

そんなとき…。

「はーい。自由時間の終了です。みんな片付けてくださーい。」と、保育士が言いました。
当然、R君は夢中になって遊び続けています。

そこへ、友達が、「R君、もう自由時間は終わりだよ。片付けなよ。」といい、ブロックを片付けようとしました。
R君は驚いて、泣きながら友達を叩いてしまいました。

さらにブロックを投げたり、大声をだしたり…。
保育士が怒ったり、なだめたりしても、効果はありません

さて、保育士はどうしたらよかったのでしょうか。

〇遊びの終了までの見通しをもたせる。

自閉症スペクトラム症の子どもは、「臨機応変の対応が苦手」という特徴があります。

ですので、事例のように急に遊びが終わってしまったり、誰かに強制終了させられそうになったりすると「パニック」を起こしてしまいます。

繰り返すことで慣れたりするものではありませんので、よく特性を理解して配慮してあげることが大切です。

〇どのように配慮すればよいのか? 

  1. 事前に遊びの終了時間を伝えたり、細目に残りの時間を伝える。
  2. タイマーやログを使用する。
  3. 「次」の活動を提示する。

事前に遊びの終了時間を伝えたり、細目に終了時間までの見通しをもたせたりすることで、遊びを終える心の準備をさせてあげることが大切です。

また、残り時間が分かりやすい「タイマー」や視覚的に時間が減っていく「ログ」は自閉スペクトラム症の子どもには有効ですね。

そして、大事なのは「次の活動」を伝えてあげることです。

次は○○だから、片付けよう。

片付けたら、次に○○してね。

など、優しく声をかけてあげることが大切です。

事例~友達に玩具を貸してみよう/4歳児:Yくんの場合~

友達との玩具の貸し借りのトラブルは、どの子でもあります。

それが、自閉症スペクトラム症の子どもなら、なおさらです。

ここでは、4歳児のYくんを事例として紹介します。

〇友達に玩具を貸すのが苦手~4歳児:Yくんの場合~

Yくんは、プラレールの玩具が大好きで、1時間でも、2時間でも遊ぶことができます。
保育園に着くと、真っ先にプラレールの玩具を探して遊ぶのです。

しかし、保育園にはプラレールの玩具が1つしかありません。
当然、ときには他の友達もプラレールで遊びたくなり…。

友達:「Yくん。プラレール貸してよ。」
Yくん:「……・。」
友達:「いつも遊んでるんだから貸してよ。」
Yくん:「…やだ!! やだ!!」
友達:「Yくんばっかりズルいよ!! みんなのものなんだよ!!」
Yくん:「うわぁー!!」

どの園でも見かける光景ですね。

さて、保育士はYくんに「玩具を貸す」ことを、どう教えていけばいいのでしょうか

〇短時間で貸す経験を繰り返す、「スモールステップ」で学習しよう

支援をする前に、支援者間で以下の前提を押さえる必要があります。

  • Yくんは玩具を「貸した」経験が少ない、もしくはない。(未経験)
  • つまり「貸す」ということが分からない。(未学習)

→スモールステップで丁寧に教える必要がある。

まず、Yくんにとって「貸す」という概念が不明確なため、一度貸してしまうと玩具は戻らないという不安があるのです。

そうではなく、「貸しても戻ってくる」という新しい学習をさせる必要があります。

〇タイマーを使って、「貸す」学習を繰り返す

まずはタイマーを10秒セットして、10秒間だけ支援者がプラレールで遊びましょう。
その間、Yくんはタイマーを見て待ちます。

10秒後、支援者は「貸してくれてありがとう」と言ってYくんに返しましょう。

初めは10秒。次は30秒、1分、2分と長くしていきます。

大切なのは、このやりとりを何度も繰り返し、「貸した」という成功経験を積むことです。(スモールステップの指導)。

「貸す」というのは、プラレールを奪われることではない。

プラレールは戻ってきて、また遊べるという学習を繰り返すことで、「貸す」ということを正しく学ぶのです。

さらに、頑張って貸した後には「貸してくれてありがとう」とたくさん褒めてあげましょう。

人から感謝されることで、「また、プラレールを貸そう。」と思い、次の行動に繋がるのです。

Yくんは、決して「貸したくない」「貸せない」「わがまま」ではなく、「貸す」ということが、どういうことか分からなかっただけなのです(未学習)。

得てして、こういうケースはたくさんあります。

子どもをよく観察し、丁寧に支援していきたいですね。

まとめ

今回は、自閉スペクトラム症の理解を深めて頂きたく、事例を交えて解説しました。

自閉スペクトラム症の子どもは、こだわりなどが強い特性上、「わがまま」「自己中心的」などと言われがちです。

しかし、決してそうではなく、自閉的傾向の特性上や未学習なだけだったりします。

そこを理解した上で、温かく子ども達に接していただけたら嬉しいです。

子ども達の笑顔を絶やさないために

日々、支援を工夫していきましょう。

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