発達障害の子どもの生きづらさ~感覚統合について~

感覚の未発達

こんにちは。

保育・療育専門家 コノアス合同会社 代表 柏木です。

みなさんは、子どもと過ごしていて、こんなことを感じたことはないですか?

保護者A

最後まで話を聞けなくて、困っている。聞いていないから、みんなと一緒に行動できない。

保護者B

泥遊びや水遊びをすごく嫌がる。なので、いつも同じ遊びになってしまう。

保護者C

いつも机やイスをカタカタ鳴らしている。ふざけているのかな…。

子どもの行動で理解できないことって、たくさんありますよね。

でも、当の本人は、いたって大真面目であることが多いのです。

そこで今回は、子どもの行動を理解するための手がかりとなる、「感覚」および「感覚統合」についてお話したいと思います。

この記事を最後まで読んでいただくと、

  • 感覚統合の理解が深まる。
  • 子ども特有の行動の背景が分かる。
  • 発達障害の専門性が高まる。

上記3つの知識が手に入ります。

ぜひ最後までお付き合いください。

目次

発達障害~感覚の未発達~

感覚が未発達な子どもの特徴

感覚が未発達の子どもは、以下のような特徴があります。

  • 散髪が苦手
  • 耳かきが苦手
  • 歯磨きの仕上げが苦手
  • 詰めを切ってもらうのが苦手

他には、鼻をかんでもらうのや、口を拭いてもらうのを嫌がる子もいます。
健康や身だしなみを整えるためには必要なので、親や支援者なら本当に困るものです。

散髪や爪切りは寝ているときにしかできなかったり、歯磨きは押さえつけないとできなかったり…耳かきをしてもらいに耳鼻科に行かないとなると事は深刻ですね。

さらに、こういった行動は大人から見れば、「わがままだ。」「我慢が足りない。」などと言われることもあります。

しかし、これは決して、わがままでも我慢が足りないわけでもなく、「触覚防衛反応」という、感覚の未発達による生理的・身体的症状なのです。

触覚防衛反応は、学習障害(限局性学習症/LD)や注意・欠如多動症(ADHD)、アスペルガー症候群の子ども達に多いのが特徴になります。

では、触覚防衛反応の理解を深めるために、1つ例をあげましょう。

生理的・身体的症状の1つに「花粉症」があります。
みなさんの家族や友人が花粉症で悩んでいたとします。

その人に対し、「慣れだよ。慣れれば治るから。」、「我慢が足りないね。」、「頑張れば何とかなるよ。」と言いますか?

「繰り返せば良くなる。」と言って、杉や林の中に連れて行きますか?

ハウスダストや誇りが充満している部屋にマスクなしで作業をしますか?

しませんよね。

つまり、それと同じことで「触覚防衛反応」は気持ちのレベルではなく、生理的な症状であるということです。

そう考えると、「慣れる」ことも「我慢させる」ことも決して有効な指導ではありません。

では、どう指導すればいいのか? 次にお話しします。

触覚などの感覚を育てよう

触覚防衛反応を解決するためには、「感覚」を育てていく必要があります。 

その際には、子どもが能動的に取り組めるものが望ましいので、「遊び」を通して、感覚を育てることをお勧めします。

以下に、例をあげます。

・「ポケットの中は何?」(手探り遊び)
・袋の中のものを当てよう(モンテッソーリ教育/秘密袋)
・砂場におもちゃを埋めておく➡掘り出して遊ぶ
・体のシールを剥がそう(体に貼られたシールを、目を閉じて剥がす)
・何が書かれたかな?(背中に〇や□、平仮名を指で書いて、それを当てるゲーム)

いずれも、感覚を集中しないとクリアできない遊びになります。

大切なことは、きちんと触れているものに集中することです。

皮膚から入ってくる触覚情報に、きちんと注意を向けて素材や形、大きさを識別する。

こういった感覚が育ってきた時に、「触覚防衛反応」は薄まっていくのです。

感覚統合~感覚の交通整理の不備~

さて、これまで「感覚/触覚防衛反応」についてお話ししてきました。
みなさんは、もう「発達障害の子どもは触覚防衛反応が強いんだね。」と理解したと思います。

ここからは、別の側面から「感覚」を見ていきましょう。

感覚統合とは、「感覚の交通整理」

発達障害の子どもは、「落ち着きがない。」「過剰におしゃべり。」「空気が読めない。」「興味の向くままに行動する。」とよく言われます。

では、なぜ上記のような行動をしてしまうのでしょうか?

「感覚統合=感覚の交通整理」という観点で、お話ししていきたいと思います。

〇感覚の交通整理〜窓際のトットちゃん〜

みなさんは「窓際のトットちゃん」を知っていますか?小学校を1年生で退学させられた、黒柳徹子さんのお話です。

黒柳さんは、幼少期から大変落ち着きがなく、興味が向くままに行動していたそうです。
当然、学校生活も例外ではありません。

学校の近くをチンドン屋さんが通ると、授業中でも窓際に行って声をかけてしまったり、先生や友達に対しても一方的に話し続けてしまったり…、いわゆる「困った子」でした。

では、なぜ黒柳さんはこういった行動をとってしまっていたのでしょうか?

黒柳さんの脳の中を、「感覚の交通整理」という観点で覗いてみましょう。

〇黒柳さんの脳の中

みなさんに質問があります。

みなさんは、今日通勤や買い物に行く途中で、何台の自転車とすれ違いましたか?

おそらく、みなさんは、このように答えると思います。

いきなり聞かれても、覚えているわけないよ。

気にしたこともないし…分からないよ。

当然ですよね。これは、みなさんの視覚に障害があるからでも、数える能力が低下しているからでもありません。

分からない、覚えていないのは、「感覚の交通整理」のおかげなのです。

私たちは脳内では、常に交通整理が行われていて、必要な感覚情報に対しては青信号を灯らせます。
反対に、不必要な感覚情報に対しては、赤信号を灯らせてシャットアウトするのです。

つまり、感覚情報の取捨選択が自動的に行われているのです。

これによって、私たちは自転車の台数など気にせず、会社やスーパーマーケットに辿り着くことができます。
私たちは、「感覚の交通整理」をすることで、必要な情報にだけ注意を向けることができるのです。

もう、おわかりですね。

幼い黒柳さんの脳内は、「感覚の交通整理」ができていなかったのです。

学校の近くをチンドン屋さんが通ると、先生の声ではなくチンドン屋さんに青信号が灯ってしまうのです。
同様に、窓際で鳥が飛んでいると彼女の視覚回路は、黒板や先生ではなく、鳥に青信号が灯ってしまうのです。

彼女の落ち着きなさや、興味の向くままに行動してしまう理由は、脳内の「感覚の交通整理の不備」にあったのです。

私たちの行動には、「感覚の交通整理」が深く関わり、重要な役目を果たしているのですね。

まとめ

今回は、感覚統合の観点から、「触覚防衛反応」と「感覚の交通整理」のお話をしました。

みなさんに分かっていただきたいことは、本人が一番苦しんでいるということです。

決して、ふざけているわけでも怠けているわけでもないということ。

いずれも、「感覚の未発達による、生理的・身体的症状」や「脳内の機能障害(感覚の交通整理の不備)」が背景としてあり、自助努力ではどうにもできないことなのです。

そこを理解した上で、子ども達に接していただけたら嬉しいです。

明日を担う、子ども達の笑顔のために。

日々、頑張っていきましょう。

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