こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
児童発達支援の現場では、「話したいのに話せない」「気持ちの切り替えが難しい」といったお子さんの姿に出会うことがあります。
こうした姿は、単なる性格やわがままと捉えられるものではなく、背景にある特性や不安の大きさが関係していることが少なくありません。
本記事では、場面緘黙と情緒面の困難をあわせて理解しながら、お子さんが安心して過ごせる関わり方について整理していきます。
場面緘黙とは

これは「話さない」のではなく、「話せない」状態であり、多くの場合は強い不安や緊張が背景にあります。
無理に話させようとする関わりは、かえって不安を強めてしまうため、「話さないこと」も含めて受け止める視点が重要です。
「情緒面の困難」とは何か

ここでいう「情緒」とは、以下のような姿を含みます。
- 急な奇声や大きな声が出る
- 癇癪や感情の爆発がある
- 場面の移行(遊び→片付けなど)で切り替えが難しい
- 集団の流れに乗ることが難しい
これらは「困った行動」として見られがちですが、実際には
- 受け入れにくさ(状況理解の難しさ)
- 切り替えにくさ(予測の難しさ)
- 不安の高さ
といった内面的な要因が影響しています。
また、これらの特性は「多動」のように外から分かりやすいものとは異なり、見えにくいことも多いため、誤解されやすい側面があります。
背景にある主な要因

情緒面の困難や場面緘黙の背景には、いくつかの要因が重なっていることがあります。
1. 不安の強さ
環境の変化や人との関わりに対する不安が強いと、「話す」「動く」といった行動そのものが難しくなります。
2. 見通しの持ちにくさ
次に何が起こるか分からない状況は、お子さんにとって大きなストレスになります。
3. 感覚の過敏さ
音や人の多さ、視覚情報などに過敏である場合、集団環境そのものが負担になります。
4. 表出手段の少なさ
言葉で気持ちを表現することが難しい場合、行動(泣く・固まる・怒る)で表現することが増えます。
支援の基本的な考え方

否定しない・無理に変えようとしない
「どうしてできないの?」ではなく、「難しいんだね」と受け止める姿勢が安心感につながります。
行動の背景を見る
表面の行動だけでなく、「なぜその行動が出ているのか」を考えることが重要です。
小さな安心の積み重ね
大きな変化を求めるのではなく、「少しできた」「少し慣れた」を積み重ねていきます。
安心感を育てる具体的な関わり

1. 「話さなくても大丈夫」と伝える
場面緘黙のお子さんにとって、「話さなければならない状況」は大きなプレッシャーです。
- うなずき
- 指差し
- カードや絵
など、言葉以外の方法でのやり取りを積極的に認めていきます。
2. 見通しを視覚的に伝える
スケジュールや活動の流れを
- 絵カード
- 写真
- タイムテーブル
などで示すことで、不安を軽減できます。
3. 切り替えをサポートする
切り替えが苦手なお子さんには、
- 「あと○分で終わり」
- 「次は○○だよ」
といった予告が有効です。
さらに、
- カウントダウン
- タイマー
などを使うことで、納得しやすくなります。
4. 安心できる「人」と「場所」をつくる
- いつも同じ職員が関わる
- 落ち着けるスペースを確保する
といった環境調整は、お子さんの安定に直結します。
5. 成功体験を意図的につくる
簡単に達成できる課題や得意な活動をたくさん取り入れ、「できた」という感覚を積み重ねます。
重度障害や発語が困難なお子さんへの配慮

発語が難しいお子さんや重度の障害があるお子さんの場合、以下の視点がより重要になります。
非言語コミュニケーションの重視
- 視線
- 表情
- 身体の動き
といったサインを丁寧に読み取ります。
コミュニケーション手段の拡張
- 絵カード(PECSなど)
- タブレット端末
- スイッチ機器
など、お子さんに合った方法を選択します。
感覚への配慮
- 音を減らす
- 照明を調整する
- 人数を制限する
など、環境面の調整が情緒の安定に大きく影響します。
学校とのつながり

小学校には、情緒面の特性に応じた支援学級(情緒学級)が設けられている場合があります。
また、場面緘黙のあるお子さんにとっても、「安心して過ごせる環境が整っているかどうか」は学校生活の質に大きく影響します。
- 集団への適応をゆるやかに進める
- 個別に応じた関わりを受ける
- 話すことを無理に求められない環境で過ごす
といった配慮は、お子さんにとって大きな支えとなります。
そのため、
- うなずきや指差しなど、言葉以外の表現も認める
- 安心できる教職員との関係を築く
- 発言を強要しない関わりを共有する
といった視点を、学校全体で共通理解として持つことが重要です。
また、児童発達支援の場で見られる
- 安心しているときの様子
- コミュニケーションの取り方
- 有効だった関わり方
などを学校と丁寧に共有することで、環境の変化による負担を軽減することができます。
まとめ

場面緘黙や情緒面の困難は、「見えにくい困りごと」であるがゆえに、誤解されやすい特性です。
しかし、その背景には
- 強い不安
- 見通しの持ちにくさ
- 表現手段の制限
といった理由があります。
大切なのは、「できるようにすること」だけでなく、安心していられる環境を整えることです。
安心感が土台となり、少しずつ「関わる力」「伝える力」が育っていきます。
FAQ

Q1. 話せないお子さんには、どこまで関わっていいのでしょうか?
無理に話させる必要はありませんが、関わり自体を減らす必要もありません。視線やジェスチャーなど、応じられる方法でのやり取りを大切にしてください。
Q2. 癇癪が起きたときはどう対応すればよいですか?
まずは安全を確保し、落ち着くまで待つことが基本です。その後、「何が難しかったのか」を振り返り、予防的な支援につなげていきます。
Q3. 切り替えがどうしてもできない場合は?
切り替えそのものを求めるのではなく、「切り替えやすくする工夫」を優先します。予告・視覚支援・選択肢の提示などが有効です。
Q4. 発語がないお子さんでもコミュニケーションは育ちますか?
はい、育ちます。言葉以外の手段(視線・ジェスチャー・ツール)を通して、「伝わる経験」を積み重ねることが大切です。
Q5. 集団参加が難しい場合はどうすればいいですか?
無理に参加させるのではなく、「見ているだけの参加」や「一部だけの参加」など段階的に関わる方法を取り入れていきます。
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