なぜ「早く」がいいの?グレーゾーンと早期療育の必要性

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

目次

1. グレーゾーンとは?——診断の有無だけでは語れない“困りごと”

「グレーゾーン」という言葉を耳にしたことはありますか?

これは、発達障害の診断基準には明確に当てはまらないけれど、集団生活や日常の中で困り感を抱えやすい子どもたちを指す言葉です。

たとえば、

  • 一つのことにこだわって切り替えが苦手
  • 同年齢の子に比べて言葉が少ない
  • 急にパニックになったり、癇癪を起こしやすい
  • 集団行動が極端に苦手

こうした様子が見られる場合でも、必ずしも医療的な診断がつくわけではありません。
しかし、本人にとっては“日常を過ごすこと”そのものが小さなハードルの連続であり、周囲の大人からの支援が求められます。

2. 「様子を見ましょう」の落とし穴

診断がつかないグレーゾーンの子どもたちは、よく「もう少し様子を見ましょう」と健診などで言われがちです。
確かに、子どもの発達は個人差が大きいため、「待つ」ことも一つの選択肢ではあります。

しかし、「待つ」ことがいつの間にか「何もしない」ことになってしまっていないでしょうか?

発達の特性による困りごとは、年齢を重ねるほど目立ちにくくなる反面、本人の中では「できない自分」へのストレスや自信のなさが蓄積されていくことがあります。

こうして自己肯定感が下がり、二次的な問題(不登校や対人トラブルなど)へとつながるケースも少なくありません。

だからこそ「気になる」時点で何かしらの手立てを講じることが大切なのです。

3. 脳の「可塑性」とは何か?

「早期療育が良い」とされる背景を考えるとき、脳の可塑性(かそせい)というキーワードがあります。

可塑性とは、「脳が経験や刺激によって形を変え、機能を高めていく力」のこと。
特に乳幼児期〜就学前までの時期は、脳のネットワークが爆発的に成長するゴールデンタイムといわれています。

この時期に、子どもの特性に合った関わりや環境を提供することで、

  • 言葉の発達
  • 社会性(他者との関わり方)
  • 感情のコントロール

などが少しずつ育まれていきます。
つまり、現時点での「今」がまさに成長のチャンスなのです。

4. なぜグレーゾーンにも早期療育が必要なのか

診断がついていないから、支援は必要ないんじゃないの?

――それは大きな誤解です。

グレーゾーンの子どもたちも、「集団のペースに合わせるのが難しい」「生活習慣がなかなか定着しない」など、日々の中でさまざまな困り感を抱えているのが現状。

こうした困難を「できないまま」にしておくと、保育園や学校の中で叱られる経験が増えたり、他の子と比べて自己否定感を抱いたりしがちです。

しかし、適切な支援を早い段階で受けることによって、「できた!」という成功体験が積み重なっていきます
この「できた!」が、後の学習意欲や社会性の土台になっていくことでしょう。

療育は「発達障害の子のためのもの」と思われがちですが、実際には「その子にとっての過ごしやすさを一緒に考える場」です。

グレーゾーンの子にこそ、早くからのサポートが必要だと考えます。

5. 早期からの支援がもたらすポジティブな影響

現場では、早期療育の効果を実感する場面が数多くあります。

たとえば、

  • 毎朝の登園時に泣いていた子が、先生の声かけに安心して、自分から挨拶できるようになった
  • 「お友だちと遊べない」と言っていた子が、絵カードや簡単なルール遊びを通じて、少しずつ他のお子さんと関わるようになった
  • パニックを起こしていた子が、職員と一緒に「落ち着くルーティン」を作ったことで、自らクールダウンできるようになった

このような変化は、決して一朝一夕ではありません。しかし、子どもの特性に応じた支援を継続的に・繰り返し・丁寧に行っていくことで、少しずつ確実に「できること」が増えていきます。

特にグレーゾーンの子どもたちは、「やりたいけどできない」「わかっているのに体がついていかない」という葛藤を抱えていることもあります。
その背景を理解し、責めるのではなく支える関わりを続けることで、子どもたち自身も「やってみよう」という意欲が芽生えてきます。

また、早期からの支援によって得られるのは、スキルの向上だけではありません。

子どもが「受け入れられている」「わかってもらえている」と感じられることは、自己肯定感や安心感を育むうえでとても大切な要素です。

さらに、早くからその子の特性や育ちのリズムに気づくことができれば、将来の小学校入学や集団適応への橋渡しもしやすくなります。

支援者や保護者がチームとなって、「その子の育ちに合った道」を一緒に考えることができるのです。

一人ひとりに合った関わりが、子どもの未来を大きく変えていく。
それが早期療育の力です。

6. 保護者にできること——迷ったら「動く」が未来を変える第一歩

まだ小さいし、大丈夫

そのうちできるようになるかも

――そんな気持ちになるのも当然です。
ですが、もし「ちょっと気になる」という感覚があるなら、早めに相談してみることをおすすめします

ポイントは以下の3ステップ:

  1. 観察する:気になる様子を具体的にメモしておく
  2. 共有する:保育士や幼稚園の先生など、身近な専門家に伝えてみる
  3. 相談する:必要に応じて、発達支援センターや専門機関に相談する

誰かに話すことで、モヤモヤが整理され、保護者自身のケアにも繋がります。
また、「今できること」が見えてくることもあるでしょう。

支援は、子どもだけでなく保護者にとっても安心をもたらすもの。
早くから動き出すことは、決して「焦って診断をつける」ことではなく、より良く育っていくための準備なのです。

おわりに

グレーゾーンの子どもたちは、一見すると、なんとかやれているように見えることが多いため、支援が後回しにされがちです。
しかし、本人の中には、他人からは見えにくい困り感や不安、無力感が積もっていることも少なくありません。

「目立たないから大丈夫」ではなく、「目立たないからこそ、早く手を差し伸べる」。
それが私たち大人にできる大切な関わりです。

療育というと、どこか特別な場所・特別な支援というイメージを持たれる方もいるかもしれません。
でも本来の療育とは、その子が、その子らしく、安心して育っていくための環境を整えること。
診断の有無に関係なく、すべての子どもに開かれた支援です。

そして何より大切なのは、保護者自身が「あのとき動いてよかった」と思える経験を重ねていくこと。
早く動くことは、決して「心配しすぎ」ではなく、よりよく育つためのサポートの一歩です。

支援は、子どもの未来を照らすだけでなく、保護者自身の気持ちも軽くしてくれます。
「ちょっと気になるかも」と思ったときこそ、未来が変わるきっかけです。

子どもの育ちを信じて、そして迷わず動ける自分を信じて、まずは一歩を踏み出してみましょう。

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