視覚支援を活用したスケジュール理解の支援法

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

子どもたちの「見通しを持つ力」を育てることは、安心して生活を送るための重要な鍵です。
特に発語がないお子さんや、理解や記憶に困難を抱えるお子さんにとって、言葉だけでスケジュールを伝えるのは難しく、日々の中で戸惑いや不安を抱えることが少なくありません。

そのような中で効果を発揮するのが「視覚支援」です。視覚支援とは、目で見て理解できる情報を用いて支援を行う方法で、特性のあるお子さんの理解や行動の見通しを助ける手段として多くの現場で活用されています。

この記事では、児童発達支援の現場で実際に行っている視覚支援の使い方や工夫、家庭でも取り入れられるアイデアを交えて、視覚支援を使ったスケジュール理解の支援法について解説していきます。

目次

なぜ視覚支援が必要なのか?

言葉の理解に時間がかかったり、耳からの情報処理が難しい子どもたちは、聴覚よりも視覚の情報を得意とする傾向があります。

そのため、口頭で「これからお出かけするよ」「お昼ごはんのあとにお昼寝だね」と伝えても、子どもにとっては一度に情報を受け止められなかったり、言葉の意味そのものがわからなかったりします。

視覚支援を活用することで、次のような効果が期待できます。

  • 予定の流れが「見てわかる」ことで安心感が得られる
  • 行動の切り替えがスムーズになる
  • 自分で予定を確認し、先を予測できるようになる
  • 不安やパニックの予防になる

特に発語がないお子さんにとっては、「言葉では説明できないけれど、見ればわかる」「言われてもピンとこないけど、絵なら理解できる」ということがたくさんあります。
これは重度の障害があるお子さんにも共通して言えることです。

スケジュール理解に使える視覚支援の種類

視覚支援と一口に言っても、その形や使い方はさまざまです。ここでは、スケジュール理解に使われる代表的な方法をご紹介します。

絵カード(PECSなど)

  • 活動や行動を1枚ずつカードにしたもの
  • 朝の会、トイレ、自由遊び、給食などをイラストや写真で表現
  • 活動が終わったら「終わった」箱に入れるなどして、完了が目に見えるようにする

絵カードはシンプルで理解しやすく、発語がないお子さんにも非常に有効です。

スケジュールボード

  • 絵カードや写真をボードに貼って、一日の流れを一覧で提示
  • 実物(スプーン、おむつなど)を使う「実物提示スケジュール」も効果的
  • マグネットやマジックテープで付け外しができると使いやすい

壁に固定する大型のものや、個人用の小型ボードなど、子どもの発達段階や理解度に合わせて調整できます。

タイムタイマー・砂時計などの時間視覚化ツール

  • 抽象的な「5分待ってね」が目で見てわかる
  • 活動時間の見通しを持ちやすくなる
  • 切り替えが苦手な子への予告にも有効

「赤い部分がなくなったら終わりだよ」など、言葉ではなく「色」や「形の変化」で時間を伝えることができます。

写真スケジュール・実物スケジュール

  • 実際の道具や活動の写真を使ったスケジュール
  • よりリアルにイメージしやすく、重度障害のあるお子さんにも向いている
  • 特に「自分の写真」「自分が使っている道具」を使うと効果的

抽象的なイラストよりも、写真や実物のほうが理解しやすいお子さんには特におすすめです。

事業所での活用事例と工夫

児童発達支援の現場では、日々の活動の中で視覚支援を自然に取り入れる工夫を行っています。例えば

  • 朝の登所時に、その日のスケジュールを個別ボードで提示
  • 活動ごとに絵カードを提示し、終わったら裏返して「完了」を明示
  • トイレや食事など、苦手な活動には「これが終わったら〇〇」と予告カードを活用
  • 集団活動の前に、見通しカードで活動内容を提示してからスタート

このように、一人ひとりの理解度や特性に応じて視覚支援をカスタマイズすることで、子どもの「わかった!」「できた!」を引き出すことができます。

ご家庭で取り入れるコツ

家庭でも簡単にできる視覚支援のアイデアをご紹介します。特別な教材や機材がなくても、手作りや印刷で十分に効果が出せます

  • 100円ショップのホワイトボードに1日の予定を手書き
  • 朝の支度(顔を洗う→着替える→ごはん)の写真を並べる
  • お出かけ前に「今から行く場所」「終わったら帰る」を写真で説明
  • 砂時計やスマホのタイマーを使って、時間の予告

ポイントは「毎日同じスタイルで提示する」ことです。習慣化することで、子どもが自分で確認したり、気持ちの切り替えがしやすくなります。

また、お子さんが実際に使っている道具や場所の写真を使うと、よりリアリティがあり伝わりやすくなります

支援者・保護者が意識しておきたいこと

視覚支援を導入する際に、大人が意識すべき大切なポイントがあります。

  • 一度にたくさん見せすぎない(2〜3個まで)
  • 予定が変わったら「変更カード」などで視覚的に説明する
  • 活動が終わったら「終わったね」と一緒に確認する
  • 使うカードや写真は子どもに合わせて更新・調整する

そして何より大切なのは「子どもが主体的に動けるようになること」が視覚支援の目的だということ。
言われたから動くのではなく、「自分で見て理解し、自分で動ける」という経験を重ねることで、自己肯定感や自立の力が育っていきます。

よくある質問(FAQ

Q. 視覚支援はどんな子に向いていますか?

A. 特に発語がないお子さん、言葉の理解がゆっくりなお子さん、切り替えが苦手なお子さんに効果があります。障害の程度に関わらず活用可能です。

Q. 絵カードやスケジュールボードはどこで手に入れられますか?

A. 市販の教材もありますが、事業所で使用しているものを家庭用にコピーしたり、無料のイラスト素材サイトを利用して自作することもできます。

Q. 毎日使うのが大変そうですが…

A. 最初は負担に感じるかもしれませんが、習慣化すれば逆にスムーズに生活が進むようになり、結果的に大人の負担も軽減されます。

Q. 子どもがカードに興味を示さない場合はどうすれば?

A. 子どもが好きなキャラクターや写真を使ったり、見やすい色・大きさにするなど工夫が必要です。無理に使わせず、少しずつ慣らすことが大切です。

おわりに

視覚支援は、言葉だけでは伝わりにくい世界を「見える化」し、子どもに安心と自信を与えてくれる強力なツールです。発語がないお子さんや、重度の障害を抱えるお子さんにも、視覚からの情報は大きな助けとなります。

児童発達支援事業所としても、ご家庭と連携しながら、ひとりひとりに合った方法で視覚支援を活用していくことが、子どもの未来を広げる一歩となります。

見通しを持てると、子どもは落ち着いて、のびのびと過ごせるようになります。今日からできる一歩として、ぜひご家庭でも取り入れてみてください。

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