療育における「見立て」と「関わり方の工夫」とは


こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

児童発達支援の現場では、日々さまざまな子どもたちと出会います。

同じ診断名、同じ年齢であっても、その姿や育ちのペース、得意・苦手は一人ひとり異なります。
そこで重要になるのが「見立て」と、それに基づく「関わり方の工夫」です。

本記事では、療育における「見立て」とは何か、そして見立てをどう日々の関わりに落とし込んでいくのかについて、重度障害児や発語が困難なお子さんも含めて解説します。

目次

見立てとは何か

療育における「見立て」とは、お子さんを評価・判断することではありません。

今、その子がどんな状態にあり、何を感じ、何ができて、何に困っているのかを多面的に捉えることを指します。

見立ての視点

見立ては、以下のような複数の視点を組み合わせて行います。

  • 発達段階(認知・運動・言語・社会性など)
  • 感覚特性(音・光・触覚・前庭感覚など)
  • コミュニケーション手段(発語、視線、表情、身体表現など)
  • 行動の背景(なぜその行動が起きているのか)
  • 環境との相互作用(人・物・空間・時間)

特に重度障害児や発語が困難なお子さんの場合、「できないこと」ではなく、どんな形で意思や不快・快を表現しているかに目を向けることが欠かせません。

見立ては固定しない

見立ては一度立てたら終わり、というものではありません。

  • 体調
  • 経験の積み重ね
  • 安心できる人や環境の変化

これらによって、お子さんの姿は日々変わります。

昨日は難しかったことが今日はできることもあれば、逆に今日は余裕がなく後退したように見える日もあります。
見立ては仮説であり、常に更新されていくものです。

関わり方の工夫とは

関わり方の工夫とは、見立てをもとに「この子が安心して人や環境と関われるように、大人側がどう動くか」を考え、実践することです。

工夫の基本姿勢

  • お子さんを変えようとしすぎない
  • 大人が環境や関わり方を調整する
  • 成功体験を積み重ねる
  • 無理に引き出さない

療育は訓練ではなく、関係性の中で育ちを支える営みです。

重度障害児・発語が困難なお子さんへの見立てと工夫

重度障害児や発語が困難なお子さんの支援では、「分かりやすい反応」だけを手がかりにしない姿勢が特に重要です。
言葉が出ないからといって、感じていない・考えていないわけではありません。
むしろ、言葉以外の表現がとても豊かであることも少なくありません。

1. コミュニケーションの見立て

発語がない=伝えたいことがない、ではありません。

視線の動き、呼吸のリズム、身体の緊張や弛緩、手足の小さな動き、表情の変化など、すべてがその子なりのメッセージです。

例えば、特定の場面で身体が強くこわばる場合、そこには不安や感覚的な負担が隠れていることがあります。
一方で、安心できる人がそばに来た瞬間に呼吸がゆっくりになる、表情がやわらぐといった変化も大切なサインです。
見立てでは、こうした微細な変化を「意味のあるもの」として受け取ります。

2. 関わり方の工夫

見立てをもとにした関わり方では、「言葉で理解させる」ことを目標にしすぎないことが大切です。

ジェスチャーや実物、写真、動作そのものを使ったやりとりを通して、伝わったという経験を積み重ねていきます。

また、反応を急がせず、十分に待つことも重要な工夫です。
大人にとっては数秒に感じる時間でも、お子さんにとっては情報を処理するために必要な大切な時間であることがあります。

予測できる流れや安心できるルーティンをつくることで、お子さんは少しずつ自分から関わろうとする姿を見せてくれるようになります。

実例① 視線から広がったやりとり

発語がなく、支援初期は反応が乏しいと感じられていたAくん。
活動中、支援者が名前を呼んでも振り向くことはありませんでしたが、実は好きな玩具が出てくると一瞬だけ視線が動くことがありました。

その小さな変化に気づき、支援者は言葉かけを最小限にし、視線の先に玩具をゆっくり提示しました。
すると、Aくんは再び視線を向け、手をわずかに動かしました。
その動きを「選んだ」「伝えた」と受け止め、すぐに玩具を手渡すと、Aくんの表情がやわらぎました。

この経験を重ねるうちに、Aくんは「見ることで伝わる」「待ってもらえる」という安心感を獲得し、視線でのやりとりが増えていきました

行動の背景を読むという視点

療育の現場では、噛む、叩く、大声を出す、泣き続けるといった行動が「困った行動」として捉えられることがあります。しかし見立ての視点では、これらも大切なコミュニケーションの一形態です。

行動の背景には、「伝えたいけれど伝わらない」「感覚的に耐えがたい」「次に何が起こるか分からず不安」といった理由が隠れていることがあります。
行動そのものを止めることに注目するのではなく、その行動が生まれた理由を考えることが、関わり方を大きく変えます。

実例② 泣き続ける行動の見立て

Bさんは活動の切り替え時になると、決まって大声で泣き続けていました。
当初は「切り替えが苦手」と捉えられていましたが、よく観察すると、泣き始めるのは必ず支援者の声かけが重なり、周囲が慌ただしくなる場面でした。

そこで見立てを「切り替えの困難さ」から「刺激過多と予測不能な状況への不安」へと修正しました。
関わり方として、次の活動を写真で示し、声かけを一人に絞り、ゆっくりと移行するよう環境を調整しました。

すると、泣く時間は徐々に短くなり、自分から次の場所へ移動しようとする姿も見られるようになりました。

行動が変わったのは、Bさんが安心できる状況を大人が整えた結果でした。

チームで共有する見立て

療育は一人で行うものではありません。

  • 支援員
  • 保護者
  • 他職種(ST・OT・PT・心理職など)

それぞれの視点を持ち寄ることで、見立てはより立体的になります。

特に保護者からの

  • 家での様子
  • 安心する関わり方
  • 困っている場面

は、現場の支援を深める大きなヒントになります。

見立てと関わり方が育てるもの

見立てに基づいた関わりは、

  • お子さんの安心感
  • 自己肯定感
  • 「伝わる」経験
  • 「やってみたい」という意欲

を育てます。

それはすぐに成果として見えなくても、確実にお子さんの内側に積み重なっていきます。

FAQ(よくある質問)

Q1. 見立てが合っているか不安です

A. 見立ては仮説です。迷いながら修正していくこと自体が大切な支援です。お子さんの反応がヒントになります。

Q2. 発語がない子にどこまで期待していいですか?

A. 発語の有無に関わらず、理解や意思は存在します。表出の方法が違うだけです。

Q3. 問題行動を減らすにはどうすればいいですか?

A. 行動を減らす前に、背景を理解することが大切です。安心と予測可能性が増えると、行動は自然と変化します。

Q4. 関わり方がうまくいかない時は?

A. お子さんではなく、環境や大人側の関わりを見直してみてください。小さな調整が大きな変化につながることがあります。

おわりに

療育における「見立て」と「関わり方の工夫」は、専門的でありながら、とても人間的な営みです。

お子さんを理解しようとする姿勢そのものが、お子さんにとっての安心となります。一人ひとりの「今」を大切に、これからも丁寧な支援を重ねていきたいですね。

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