こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
「児童発達支援の現場では、日々の活動や生活の中で子どもから「いや!」という言葉や態度が返ってくる場面は少なくありません。
例えば、片付けの時間になっても遊びをやめられない、着替えや食事を嫌がる、活動の切り替えを拒むなど。
こうした場面に出会ったとき、大人は戸惑い、「どうしたら言うことを聞いてくれるのだろう」と悩むことがあります。
この記事では、その背景や意味を理解しながら、無理なくルールを伝える方法を、児童発達支援の現場の視点から詳しく解説します。
なぜ子どもは「いや!」と言うのか

自己主張の芽生えと発達段階
「自分でやりたい」「選びたい」という欲求が強まり、行動や選択において自分の意思を通そうとします。
発達に特性がある子どもも同様で、自分なりの世界観やこだわりを守るために「いや!」が出やすくなります。
これは、自分と他者の境界を認識し始めた証拠とも言えます。
感覚の過敏さや環境要因
例えば、服のタグがチクチクする、掃除機の音が不快、蛍光灯の光がまぶしい…こうした感覚的な不快さが「いや!」の引き金になります。
また、予定外の出来事や人の多い空間など、環境の変化によるストレスも拒否行動を引き起こします。
言語能力や感情コントロールの未発達
子どもはなおさら、自分の不安・怒り・疲れを言葉にできず、単純な「いや!」で全てを表現してしまいます。
これは感情調整の力がまだ育っていない証拠であり、困っているサインでもあります。
「いや!」を受け止める第一歩

共感の言葉をかける
- 「やりたくないんだね」
- 「びっくりしたんだね」
- 「イヤな気持ちになったんだね」
こうした言葉は、自分の気持ちをわかってくれたという安心感を与えます。
非言語コミュニケーションの活用
特に言葉でのやり取りが苦手な子には効果的です。
間を置く
数十秒〜数分待つだけで、気持ちが落ち着き、受け入れやすくなることもあります。
ルールを伝えるための工夫

肯定的な言い換え
禁止形ではなく、望ましい行動を直接伝えます。
- 「走らないで」
- 「歩こうね」
肯定的な言葉は理解しやすく、行動にもつながりやすいです。
視覚支援の活用

絵カード、写真、スケジュール表を使えば、言葉での理解が難しい子どもにもわかりやすくルールを伝えられます。
「今」「次」「その次」と視覚的に見せることで、見通しが持てます。
小さな選択肢を与える

「赤い椅子と青い椅子、どっちに座る?」など、ルールの中で選べる余地を作ります。
選択肢があることで、自主性と安心感を両立できます。
現場での具体的な対応例
支援の現場では、「子どもが苦手な場面」をどう工夫してサポートするかがとても大切です。ここでは、実際に行った支援の例を2つ紹介します。
事例1:活動の切り替えが苦手なAくん

Aくんは遊びをやめて片付けることが苦手で、毎回「いや!」と強く抵抗していました。突然の切り替えに不安を感じていたのです。
そこで支援者は、以下の工夫を取り入れました。
- 片付けの10分前に「もうすぐ終わりだよ」と予告する
- タイマーを使い、残り時間を数字や音で分かるようにする
- 片付けが終わった後に、好きな遊びを用意しておく
このように「見通し」と「楽しみ」を組み合わせることで、Aくんは次第に切り替えを受け入れられるようになりました。
事例2:集団活動での拒否が多いBちゃん

Bちゃんは工作が苦手で、集団での活動になると「やりたくない」と拒否してしまうことが多くありました。
支援者は無理に参加させるのではなく、少しずつ安心して取り組める工夫をしました。
- 活動が始まる前に、完成品や作るものの写真を見せてイメージを持たせる
- 参加時間を最初は数分だけに短く設定する
- 「できた!」という経験を積ませ、少しずつ時間や内容を広げていく
こうした支援を続けることで、Bちゃんは少しずつ活動に前向きになり、参加できる時間が延びていきました。
事例のまとめ
AくんやBちゃんの例から分かるのは、子どもが苦手な場面に対して「予告」「視覚的な工夫」「成功体験」を組み合わせることが有効だということです。
子どものペースに寄り添い、小さな一歩を積み重ねることで、苦手な場面も少しずつ「できる」に変えていけます。
「いや!」対応で避けたいこと

- 怒鳴る・威圧する
恐怖で従わせても納得は得られず、信頼関係を損ないます。 - 気持ちを無視してすぐ指示
背景の感情を無視すると、拒否が強まり行動改善が難しくなります。 - 罰で好きな活動を奪う
一方的に奪うと反発や不信感を招き、支援への協力意欲が低下します。
家庭との連携で一貫性を持たせる

- 連絡帳や写真で共有
日中の様子を具体的に伝え、家庭でも会話や支援が続けやすくなります。 - 家庭の困りごとを反映
家庭での課題を聞き取り、現場で練習や工夫を行い生活全体を支えます。 - 共通のルールと言い方
同じ言葉や手順を使うことで、子どもは混乱せず安心して行動できます。
支援者自身の心のケア

- 相談・共有
困った場面や成功例を話し合い、安心感と新しい工夫を得られます。 - 定期的な振り返り
週単位で関わりを見直し、改善点や良かった点を整理します。 - 休息の確保
十分な休養や趣味の時間を取り、大人の安定を保つことが支援の土台です。
FAQ

Q1. 「いや!」が多いのはわがままだからですか?
いいえ。多くの場合は自己主張の発達や不安、感覚の過敏さなどが背景にあります。理由を理解して対応することが大切です。
Q2. 拒否が強いときはどうすればいいですか?
まずは気持ちを受け止め、落ち着く時間を確保します。そのうえで、視覚支援や選択肢を用いた声かけで促すと効果的です。
Q3. 家庭と施設で対応が違うとどうなりますか?
対応が異なると混乱や拒否が強まることがあります。共通の言葉やルールを決め、一貫性のある支援を行うことが重要です。
結論:拒否は成長のチャンス

「いや!」は、自己主張・感覚特性・環境要因・感情調整の未熟さなど、多くの背景が絡み合って生まれます。
まずは受け止め、共感し、その後にルールをわかりやすく伝えることで、子どもは安心して行動を変えていけます。
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