靴の脱ぎ履きを楽しく覚えるコツ

児童発達支援の現場やご家庭で、毎日のように繰り返される「靴の脱ぎ履き」。

一見すると生活の中の小さな動作ですが、実はこの中には、

  • 体の使い方
  • 見通しをもつ力
  • 手順を理解する力
  • 「じぶんでやりたい」という意欲

など、たくさんの発達要素が詰まっています。

一方で、

  • なかなか脱ごうとしない
  • 反対に投げてしまう
  • 履かせようとすると嫌がる
  • 時間がかかりすぎてしまう

といった悩みも多く聞かれます。

今回は、児童発達支援事業所の視点から、靴の脱ぎ履きを「練習」ではなく「楽しい経験」として身につけていくコツをお伝えします。障害の重いお子さんや、発語のないお子さんへの関わりも含めて考えていきます。

目次

靴の脱ぎ履きが難しい理由

まず知っておきたいのは、「できない」の裏には、必ず理由があるということです。

靴の脱ぎ履きには、

  • 片足で立つバランス感覚の難しさ
  • 体を支えながら手を使う協調運動
  • 左右の理解
  • 次に何をするかの見通し

などが同時に求められます。

特に、

  • 感覚過敏・鈍麻のあるお子さん
  • 筋緊張の調整が難しいお子さん
  • 見通しをもつことが苦手なお子さん

にとっては、靴の脱ぎ履きはとてもハードルの高い動作です。

「やりたくない」のではなく、「難しすぎる」「不安」「どうしていいかわからない」という気持ちが隠れていることも少なくありません。

まずは「脱ぐ」から始める

靴の脱ぎ履きは、「履く」よりも「脱ぐ」方が難易度が低いことが多いです。

  • マジックテープを外す
  • かかとを踏む
  • 足を引き抜く

など、一つひとつの動作に分けて考えます。

最初は、

  • 片足だけ
  • 手を添えながら
  • 支援者が動作を大きく見せながら

といった形で、「関われた部分」を大切にします。

全部できなくても、「脱ぐ流れに参加できた」こと自体が大きな一歩です。

楽しく覚えるための具体的な工夫

① 靴の左右を「わかりやすく」する

左右が分かりにくい場合は、

  • キャラクターのシールを半分ずつ貼る
  • 色テープで目印をつける

など、視覚的な手がかりを用意します。

「ここに足を入れるんだよ」と、言葉だけでなく見て分かる工夫が大切です。

② できる姿勢を探す

必ずしも、

  • 立って
  • 靴箱の前で

でなくても構いません。

  • 椅子に座って
  • 床に座って
  • 支援者の膝に体を預けて

など、その子が一番安定する姿勢を選ぶことで、成功しやすくなります

③ 声かけはシンプルに

ほら、ちゃんと前向きにして、右足から入れて…

たくさんの言葉は、かえって混乱のもとになります。

  • 「ぬぐよ」
  • 「いれてね」
  • 「できたね!」

など、短く、同じ言葉を繰り返すことで、動作とことばが結びつきやすくなります。

障害の重いお子さんの靴の脱ぎ履き

身体的・知的に障害の重いお子さんの場合、

  • 自分で動かせる範囲が限られている
  • 姿勢保持が難しい
  • 介助が必要

ということも多くあります。

この場合の目標は、一人で脱ぎ履きできることではなく、靴の脱ぎ履きに「参加する」こと

です。

例えば、

  • 靴に触れる
  • マジックテープを引っ張る
  • 脱いだ後に靴を置く

など、関わることのできた一部分を大切にします。

支援者が全介助で行う場面でも、「今、靴を脱いでいるよ」「終わったね」と伝えることで、経験として積み重ねていきます。

発語のないお子さんへの関わり

発語がないお子さんでも、靴の脱ぎ履きに対する気持ちは、

  • 体の動き
  • 表情
  • 手を払う・引き寄せる

などで表れます。

  • 嫌がったら一度止める
  • 目を向けたタイミングで次の動作に入る
  • ジェスチャーや写真カードを使う

といった関わりで、「伝わった」という経験を大切にします。

靴の脱ぎ履きは、立派なコミュニケーションの場面でもあります。

「できた」よりも「やってみた」を

時間がかかっても、

  • 自分で足を動かそうとした
  • 靴に手を伸ばした
  • 最後までその場にいられた

これらはすべて大切な成長です。

「早くしなさい」よりも、

やってみたね

がんばったね

という声かけが、次への意欲につながります。

家庭と事業所で共有したいポイント

靴の脱ぎ履きは、毎日繰り返されるからこそ、家庭と児童発達支援事業所での連携が重要です。

  • 家では帰宅時など時間に余裕のある場面で挑戦する
  • 事業所では成功しやすい方法を探す
  • うまくいかない日があってもお子さんや自分自身を責めない

「今日はここまでできた」「ここで嫌がった」など、小さな情報共有が、お子さんに合った関わりにつながります。

おわりに

靴の脱ぎ履きは、単なる生活動作ではありません。
それは、「自分の体で、自分の生活に関わる」という、とても大切な経験です。

できるスピードや形は一人ひとり違います。

靴を脱ぐ・履くという毎日の積み重ねの中で、子どもたちは少しずつ「自分でできた」「自分がやった」という実感を育てていきます。

同じお子さんでも、体調や気分、その日の出来事によって大きく変わることがあります。昨日できたことが今日は難しい日もあれば、ふとした瞬間に一歩進む日もあります。

児童発達支援事業所として、私たちはこれからも、

  • 無理をさせず
  • 楽しさを大切にし
  • 小さな「できた」や「やってみた」を一緒に喜びながら

子どもたち一人ひとりのペースに寄り添い、その成長を丁寧に支えていきます。

FAQ(よくあるご質問)

全然やろうとしないのですが、練習させた方がいいですか?

無理に練習する必要はありません。不安や難しさが原因のことも多いため、まずは見ているだけ、触れるだけなど、関われる段階から始めます。

時間がかかりすぎて困ります

急ぐ場面では大人が手伝い、余裕のある場面で子どもに任せるなど、場面を分けることがおすすめです

靴を投げてしまいます

感覚遊びや気持ちの切り替えとして行っている場合もあります。投げる前の様子や環境を見直し、代わりの行動を一緒に探していきます。

発語がなくても理解しているのでしょうか?

ことば以外でしっかり理解しているお子さんも多くいます。繰り返しの経験や一貫した関わりが理解につながります。

どこまでできれば十分ですか?

明確なゴールはありません。その子がその時に関われていること自体が、大切な成果です

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