こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
発達障害のある子どもの「朝の準備」がうまくいかない理由とは?

はじめに:朝の支度がうまくいかない悩み
朝は一日のスタートですが、発達障害のあるお子さんにとっては、多くの課題が重なる時間帯です。
【例】
- 何度声をかけても着替えない
- ご飯の途中でどこかへ行ってしまう
- 出発時間になってもまだパジャマのまま
発達障害のある子どもにとって「朝の準備」が難しい理由
1. 見通しが立たないと不安になりやすい(ASD傾向)

具体的な困難の例:
- 「次に何をするか」が分からないと、強い不安感や抵抗感を示す
例えば「今は着替えの時間」と言われても、その後に何が待っているのかが不明確だと、「次に嫌なことがあるかもしれない」と感じて行動を拒否します。 - 複数のタスクがあると、処理しきれず固まってしまう
「顔を洗って、歯を磨いて、ランドセルを持って…」と一度に伝えられるとパニックになるケースもあります。
背景にある特性:
- 想像力の弱さ:先の展開を頭の中でシミュレーションすることが難しい
- 柔軟性の低さ:予定外の変更に対応しづらい
- 不安の強さ:予測できないことに対する恐怖や抵抗が大きい
2. 注意がそれやすく、切り替えが苦手(ADHD傾向)

具体的な困難の例:
- 着替え中にテレビの音やペットの動きに気を取られて止まってしまう
たとえば、シャツを頭にかぶったまま動きが止まり、別のことに夢中になることもあります。 - 「ごはんの時間だよ」と言われても、遊びに集中していて聞こえていないように見える
本人の中では「遊び」がまだ終わっておらず、行動の切り替えができていません。
背景にある特性:
- 選択的注意の困難:必要な情報に集中し、他を無視することが難しい
- 作業記憶の弱さ:今するべきことの順序を頭に保持できない
- 実行機能の弱さ:自分の行動を計画し、順序立てて進めることが苦手
3. 言語理解に課題がある(言語発達遅延・非言語傾向)

具体的な困難の例:
- 「早く着替えてね」と言われても、「早く」や「着替える」の意味があいまい
単語や文の意味が正確に理解できておらず、言われた通りに動けない。 - 指示の処理に時間がかかるため、行動までにタイムラグがある
保護者が何度も同じことを言ってしまい、子どもが混乱する原因になる。 - 言葉の代わりにジェスチャーや視覚での伝達が必要
絵カードや写真など、視覚的な支援が有効です。
背景にある特性:
- 聴覚処理の弱さ:言葉としての音を聞き取って意味に変換するのが苦手
- 処理速度の遅さ:言語情報を理解するまでに時間がかかる
- 語彙の少なさ・構文理解の未熟さ:日常語彙や文章の構造が未発達な場合も多い
補足:複数の特性が重なるケースも多い
たとえば、「ASD傾向で見通しが立たない上に、ADHD傾向で注意がそれやすい」といった場合、朝の支度にはより一層の工夫と配慮が必要になります。
朝の準備をスムーズにする「5つのルーティン設計ポイント」

1. 視覚的なスケジュールで「見通し」を持たせる
- 絵カード・写真スケジュール・ボード活用
- タスクの順序を一目で分かるようにする
- 例:マグネットで進行を可視化
- 例:マグネットで進行を可視化
2. 行動を細かく分けて達成感を積み重ねる
- 例:「着替える」→「パジャマを脱ぐ」「ズボンをはく」などなど……
- チェックやスタンプで「できた!」を実感
3. 一定の時間と順番で習慣化する
- 毎日同じ時間・同じ流れで繰り返す
- 例:7時起床 → 7:15着替え → 7:30朝食
- 時間感覚が曖昧な子には視覚タイマーやタイムタイマーを使用
4. 成功体験を重ねて自信と安心感を育てる
- 小さな成功もほめて強化する
- 声かけ例:
- 「すごいね!もう自分で着替えられたね」
- 「次はどこまでできるかな?」
5. ごほうびや好きなことと結びつける
- モチベーションUPに「ごほうびタイム」を活用
- 例
- ルーティン完了後に動画タイム
- スタンプカードを使い、貯まったらプレゼント
- 例
障害の重さや発語の有無に応じた具体的支援例
ケース1:障害が軽く、発語もある子

- 特徴:
- 指示は理解できるが、集中・やる気に課題
- 指示は理解できるが、集中・やる気に課題
- 支援法:
- 時間割カードの掲示
- タイマーの活用
- 一緒にスケジュール確認
- 小さなご褒美で意欲向上
ケース2:障害が重く、発語がない子

- 特徴:
- 言葉の理解が困難、行動理解に時間がかかる
- 言葉の理解が困難、行動理解に時間がかかる
- 支援法:
- 写真・イラストの提示
- 手を添えて動作を一緒に行う
- 拍手やハグで感情的な強化
- 基本は視覚提示+身体的ガイド
ケース3:過集中・こだわりが強い子

- 特徴:
- 自分の世界に入りすぎて切り替えが難しい
- 自分の世界に入りすぎて切り替えが難しい
- 支援法:
- 終了を伝える合図を決めておく(タイマーの音・カードなど)
- 「あと5分」の視覚予告
- ステップをこなすの工夫(例:歯みがきの歌・お片付けの歌など)
保護者のストレスを減らすためにできること
- 完璧を目指さず「昨日より1つできた」でOK
- 失敗しても大丈夫。振り返って次に活かす
- 支援は家族で分担し、ワンオペを避ける
- 支援機関に相談する(療育センター等)
よくある質問(FAQ)

Q1:毎日同じルーティンでも、飽きてやらなくなることはありますか?
A:あります。飽きてきたら順番やアイコン、ごほうびを変えるなどの工夫をしましょう。
Q2:兄弟と同じルーティンができません。どうすれば?
A:個別対応が基本です。それぞれに合った支援を行うことで、兄弟関係も良好に保てます。
Q3:登園・登校の時間に間に合いません。どうしたらいいですか?
A:前夜にできる準備(服や持ち物の確認)を済ませ、朝のタスクを減らしましょう。
おわりに:「その子に合ったルーティン」で朝の混乱を減らそう

朝の準備は、発達障害のあるお子さんにとって多くの困難が重なる時間です。
だからこそ、一人ひとりに合ったルーティンを工夫し、少しずつ「できた!」を増やすことで、自信と成長につながります。
完璧を目指さず、小さな一歩を大切に。
お子さんと一緒に、少しずつ「朝が楽になる」日々を築いていきましょう。
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