こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
子育てにおいて、「園に通う」ことが前提とされる場面は多くあります。
しかし、すべてのお子さんが安心して通園できるわけではありません。
とくに発語がないお子さんや重度の障害を持つお子さんは、体調面や感覚過敏、移動の困難さ、意思疎通の困難など、さまざまな要因によって、通園が大きなハードルとなることがあります。
こうしたご家庭では、「支援を受けたいけど、園に通えないから諦めるしかないのか」という思いを抱えていることも少なくありません。しかし近年では、そうした子どもたちにも配慮した在宅型の発達支援=ステップアップ支援が広がりつつあります。
通園が難しい背景とは
通園が難しい理由は、単に体調や障害の有無だけではなく、多層的な要因が複雑に絡み合っています。
医療的ケアや身体的制限

- 呼吸器や胃ろう、吸引、在宅酸素などを必要とする場合、通常の施設では対応が難しい。
- 痙縮(けいしゅく)や筋緊張が強く、長時間の座位保持や移動に苦痛が伴う。
- 発作が起こりやすく、常に観察が必要。
知的・発達的特性

- 知的障害の程度が重く、環境の変化に極端に弱い。
- 発語がなく、意思疎通に時間と工夫を要する。
- 集団行動や指示理解が難しく、パニックを起こしやすい。
感覚の過敏さ・精神的負担

- 聴覚過敏や視覚過敏により、人の声や蛍光灯の光に過敏に反応。
- 不慣れな場所に行くことで強い不安を感じる。
- 特定のルーティンが崩れると混乱する。
家庭環境や地域要因

- 山間部や交通の便が悪い地域に住んでおり、送り迎えが困難。
- きょうだい児の育児や介護との両立で通園ができない。
- 母親が精神的に疲弊しており、外出自体が大きな負担になっている。
このように、通園が難しい背景は単一ではありません。したがって、支援も「通園できないから対象外」ではなく、その状態に合わせて「どう支えるか」という視点が不可欠です。
ステップアップ支援とは:家庭で始める発達支援の選択肢

基本的な考え方
「ステップアップ支援」とは、家庭を拠点にした発達支援の形態で、通園前や通園困難な子どもたちへのアプローチです。各自治体によって制度名や提供形態は異なりますが、共通して以下の特徴を持っています。
- 子どもの状態や特性に応じて、段階的に支援を進める(無理に園に通わせるのではなく、その子に合った環境で育つ)
- 保護者の不安や悩みにも寄り添い、家庭を支援の拠点として整える
- 通園が可能になった場合には、その移行をサポートする
主な支援内容
- 訪問型療育(居宅訪問型児童発達支援)
保育士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅に訪問し、個別に支援を行う。 - 家庭向け療育プログラムの提供
発達に合わせた課題や遊び方のマニュアル、手作り教材などを提供し、家庭内での支援を促す。 - 保護者支援プログラム(ペアレント・トレーニング)
子どもへの適切な関わり方を学ぶ研修やワークショップをオンラインや訪問で実施。 - ICT(オンライン)支援
Zoom等を活用し、言語訓練や相談支援をリモートで受ける。 - 外出困難時のリモートモニタリング・相談
発達状況の記録や動画共有を通じて、専門家が遠隔でアドバイスを提供。
発語のないお子さんへのアプローチ
言葉を使って自分の気持ちや欲求を伝えることができない子どもにとって、「わかってもらえない」という経験の積み重ねは非常に大きなストレスになります。
非言語コミュニケーションの重要性
- 視線、身振り、表情などのサインに注目する
- 「今、何を伝えたいのか?」を周囲が根気よく読み取ることが信頼関係の第一歩
支援ツールと実践例

- 絵カード(PECS)
絵や写真を組み合わせて気持ちや要求を表す。 - 視覚支援スケジュール
今日の予定を「見る」ことで見通しが立ち、安心感につながる。 - ボイストークアプリやAAC機器
タブレットで「おなかがすいた」「トイレ」などのボタンを押すと音声が出る。 - 音楽やリズムを使った意思表示
音の刺激が発語のきっかけになることもある。
家庭との連携の重要性
発語がない子どもに対しては、保護者の観察が最大のヒントです。「どんなときに笑うか」「何を嫌がるか」など、細かな情報を支援者と共有することで、より適切な支援計画が立てられます。
重度障害児への支援と環境の工夫
医療・リハビリとの多職種連携
- 訪問看護、訪問リハビリと連携し、体位交換・嚥下・呼吸サポートなども含めた包括支援
- 作業療法士によるポジショニングの工夫(褥瘡予防、視線の確保、身体の緊張緩和)
感覚統合を活かした環境づくり
- 光や音、触覚刺激に過敏な場合は、スヌーズレンルームのようなリラックス空間を家庭に再現
- 揺れや圧迫、柔らかい素材を用いた感覚遊びで、緊張を和らげる
家族との「肯定的な時間」の積み重ね
重度障害があっても、「目が合った」「笑った」「音に反応した」などの変化は大きな前進です。
ステップアップ支援では、保護者と一緒にその「小さな成長」を言語化し、共有する文化が大切にされます。
おわりに:「通園できない」から始まる支援もある
発語がなくても、重度の障害があっても、子どもたちは確かに周囲とつながり、育つ力を持っています。そして、家庭という安心できる場が、そのスタートラインになります。
子どもたちのペースを尊重しながら、保護者と専門家が手を取り合い、「できることを少しずつ広げていく」。そんな一人ひとりに寄り添う支援の輪が、今、各地で広がっています。
「通園が難しい」ことに悩むすべての家庭に、あたたかく実効性のある支援が届く社会を、ともに目指していきましょう。
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