こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
幼児期のお子さんにとって、初めて「送迎バス」や「集団での登園」を経験することは大きな挑戦です。
特に発語がまだなかったり、初めての環境に不安を抱きやすいお子さんにとっては、朝の登園が一日の中で一番大きなハードルになることもあります。
なぜ送迎バスや集団登園が不安になるのか?

1. 環境の変化に敏感
見慣れない大きなバスや、車内に響くたくさんの子どもたちの声、など大人にとっては当たり前でも、子どもにとっては強い刺激となります。そのため「いつもと違う」という環境変化に敏感で不安を感じやすくなります。
2. 分離不安
送迎バスに乗ると、保護者と離れて過ごす時間が始まります。この「離れること」自体が不安の原因になります。特に低年齢のお子さんは「また会える」という感覚がまだ弱いため、「ママやパパがいなくなってしまう」と感じて泣いたり、乗車を嫌がったりするのです。
3. 見通しのなさ
「どこへ行くの?」「いつ着くの?」という見通しがないと、大人でも不安になります。時間や距離の感覚が育っていない子どもにとっては、乗車時間がとても長く感じられることがあります。何も知らされないままバスに乗ると「ずっとこのまま?」と誤解し、不安につながります。
4. 感覚の過敏さ
バスの中は、エンジン音や揺れ、においなど、たくさんの刺激があります。聴覚や触覚に敏感なお子さんは、この環境に強いストレスを感じてしまうことがあります。そのため「バス=嫌な場所」と結びつき、乗車を避けようとすることがあるのです。
このように、送迎バスや集団登園に不安を感じる理由には、環境の変化・分離不安・見通しのなさ・感覚の過敏さが大きく関わっています。お子さんの特性を理解し、それぞれに合った工夫をすることで、少しずつ安心して登園できるようになります。

具体的な対応方法

1. 事前に見通しを持たせる
- 写真やイラストで「バス」「先生」「園舎」を見せておく
- 前日に「明日はバスに乗るよ」と伝えて心の準備をする
2. 小さなステップで慣れる

- まずはバスを外から見る
- バスに座ってみる(動かさない状態)
- 短い距離だけ乗ってみる
- 少しずつ時間を延ばす
3. 安心できるアイテムを持たせる
- お気に入りのぬいぐるみやタオルを持参
- 小さな安心材料が「お守り」となり、不安を和らげます

4. 保護者からのポジティブな送り出し
- 「がんばってね」ではなく「楽しんでね」「いってらっしゃい」と声をかける
- 不安を引きずらないよう、笑顔で送り出すことが大切です
5. 登園後のフィードバックを伝える
- 園の先生から「今日は泣いたけどバスに乗れました」「笑顔で手を振れました」と報告してもらう
- 保護者が「がんばったね!」と褒めることで自己肯定感が高まります

実際の声かけ例
- バスに乗る前: 「今日はバスで行くんだね。座ったらシートベルトをカチッとしようね」
- 不安そうなとき: 「ママはここでバイバイするけど、先生が一緒にいてくれるよ」
- 降園後: 「朝は泣いちゃったけど、ちゃんとバスに乗れたね!すごいね」
- 習慣化を促すとき: 「明日も同じバスで行こうね」
ABA的には「具体的にできたことを褒める」声かけが効果的です。
重度のお子さんへの工夫
- アイコンタクトや握手で送り出す: 言葉でのやり取りが難しくても「いってらっしゃい」の合図を共有できます。
- 短時間だけ同伴登園を取り入れる: 最初の数日は保護者も一緒に乗車して安心感を与える
- 視覚支援を使う: 写真カードで「今はバス→次は園→その次は遊び」の流れを見せる
ABA的には「小さな成功を強化」することが重要です。たとえ泣いていても「バスに座れた」「先生に抱っこされながらでも登園できた」など、できた部分を見つけて褒めることが次につながります。
保護者ができるサポート

ご家庭でできる工夫のひとつに「ロールプレイ(ごっこあそび)」があります。例えば、椅子をいくつか並べて「バスごっこ」をしてみたり、ぬいぐるみを使って「登園ごっこ」をしてみる方法です。実際の場面を家庭で楽しく再現することで、子どもにとって「バスに乗ること」や「登園すること」が遊びの延長として経験でき、少しずつ不安が和らいでいきます。
登園時だけ使う特別なフレーズを決めておくと、子どもはその言葉を合図のように感じ、「これからバスに乗るんだ」と見通しを持ちやすくなります。
- 例:「バスで冒険だ!」
- 毎日同じ言葉を繰り返す
- 明るいトーンで伝える
このように、シンプルで前向きなフレーズを繰り返すことで、子どもは次第にその言葉を聞くと登園モードに切り替えやすくなります。
登園準備チェックリスト
- リュックや持ち物を前日にそろえておく
- 送迎バスの写真やカードで「見通し」を確認
- 安心グッズ(ぬいぐるみ・タオル)を用意
- 「今日はバスで行くよ」と予告しておく
- 出発時の声かけフレーズを決めておく
よくある質問(FAQ)

Q1. 泣いて嫌がるときは無理に乗せた方がいいですか?
A1. 無理に乗せるのは逆効果です。まずは「座るだけ」「見るだけ」から始め、少しずつ慣れることを目指しましょう。小さな成功を褒めることが一番の近道です。
Q2. どのくらいで慣れる子が多いですか?
A2. 個人差があります。数日で慣れる子もいれば、数週間かかる子もいます。ABA的に言えば、強化子(褒め言葉・達成感)をこまめに与えることで定着が早まります。
Q3. 保護者が一緒にバスに乗るのはよくないですか?
A3. 初期の慣らしとしては有効です。ただし長期間続けると「保護者がいないとダメ」という依存につながるため、少しずつ距離をとる工夫が必要です。
Q4. 感覚過敏でバスの音や揺れが苦手です。どうすればいいですか?
A4. ノイズキャンセリングイヤホンやイヤーマフを使う、好きな音楽を小さな音で流す、座席を指定して揺れを軽減するなどの工夫が効果的です。
Q5. 登園後も泣き続けていると聞くと心配です。
A5. 初めは泣いても、少しずつ泣く時間が短くなったり、遊びに切り替えられるようになります。先生と連携して「泣いたけど10分で遊び始めました」など具体的なフィードバックをもらうと安心できます。
まとめ

送迎バスや集団登園は、小さなお子さんにとって大きなチャレンジです。不安や抵抗があっても、見通しを持たせる・小さなステップを積む・成功を強化するという工夫で、少しずつ「できる!」という体験を積み重ねることができます。
保護者の方が「うちの子はゆっくりタイプだから大丈夫」と構えることも大切です。焦らず一歩ずつ、お子さんに合ったペースで取り組んでいきましょう。
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