幼稚園・小学校にスムーズに移行するために大切な『見通し』をもてる支援とは?

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

目次

「見通しをもつこと」が子どもの安心と自立を育てる

児童発達支援の現場では、子どもたちが「これから何が起こるのか」を理解し、心の準備ができるように支援することが重要です。

これは単なるスケジュール管理以上に、子どもの不安を取り除き、自発的な行動や自信につながる鍵となります。

特に幼稚園や小学校への移行期は、大きな環境の変化に直面するため、子どもが「見通しをもって行動できる」状態を目指す支援が欠かせません。

本記事では、「見通しをもてる支援」がなぜ大切なのか、どのような支援が効果的なのか、具体的な取り組みや事例を交えて、児童発達支援の視点から詳しく解説します。

なぜ「見通しをもてる支援」が大切なのか?

子どもが抱える「不安」の正体とは?

発達に特性のある子どもたちは、周囲の状況を瞬時に理解することが難しかったり、想像する力や切り替えの力に時間がかかったりすることがあります。
そのため、予定が急に変わったり、指示が曖昧だったりすると、「何をすればいいのか分からない」「どうなるのか分からない」という不安が強くなり、パニックや混乱、かたまってしまうといった反応につながることがあります。

特に初めての場所や初めての活動、新しい人との関わりなどは、大人が想像する以上に子どもにとって大きなストレスとなります。

見通しが持てない状況では、自信を失ったり、やる気をなくしてしまったりすることもあります。

以下のような場面は、特に子どもたちが不安を感じやすいポイントです。

  • 何が始まるか分からない
    (例:次の活動が知らされていないまま集まりに参加する)
  • どこに行くか分からない
    (例:予告なしで園外に出かける)
  • どうすればよいか分からない
    (例:自由遊びの時間に明確な選択肢がなく戸惑う)
  • いつ終わるか分からない
    (例:長時間にわたる集会や行事の中でゴールが見えない)

これらの場面では、「分からない」ということ自体が不安やストレスの源になります。
特に言葉での理解が難しい子や、感覚に敏感な子にとっては、環境のちょっとした変化や見慣れない流れが「大きな壁」となって感じられるのです。

このような子どもたちが、安心して行動し、自分の力を発揮できるようになるためには、「見通しをもつこと」が非常に重要です。

見通しとは、「これから何が起きるのか」「自分は何をするのか」「どうすればよいのか」を事前に把握できる状態のことです。
あらかじめ情報が伝えられ、内容を理解できていると、子どもたちは不安を減らし、落ち着いて行動できるようになります。

「見通し」は、子どもの心の中に「安心」と「自信」という土台を育てる支援の第一歩ともいえるのです。

見通しをもてることの心理的メリット

  • 安心感が高まり、不安やパニックの予防につながる
  • 自分から行動しやすくなる(自主性の向上)
  • 成功体験が増えることで自己肯定感が育つ
  • 社会的な適応力(切り替え・待つ・順番を守るなど)が身につく

特に就学前の年長児にとって、「小学校ってどんな場所?」「何をするの?」という不安を抱えたまま入学すると、大きな混乱を招くこともあります。

見通しをもてるための具体的な支援方法

視覚支援の活用(スケジュール・タイムタイマー・写真)

言葉だけでは理解が難しい子に対して、以下の視覚支援が効果的です。

  • 絵カードや写真で「今日の予定」を提示
  • タイムタイマーで時間の流れを見せる
  • 写真で活動の流れを視覚化(例:給食の手順)
  • 小学校の校舎・机・椅子などの写真で事前学習

「次に何をするか」「どれくらいかかるか」が見えることで、安心して行動できます。

予告と振り返りで構造化を強化する

活動前と後に声かけを行い、「予測→行動→評価」の流れを習慣化します。

例:

  • 予告:「今から運動遊びをします。ボールを使って体を動かします。終わったら読み聞かせの時間です」
  • 振り返り:「○○くん、ここが頑張ったところだね。次はどうしたい?」

この一連の流れで、自己調整力や振り返りの力が育ちます。

段階的な環境設定と役割練習

小学校への移行期には以下のような取り組みが効果的です。

  • 「小学校ごっこ」や「教室体験」の導入
  • ランドセルを背負って登園
  • 校門や教室の写真で入学後の流れを説明
  • チャイム音や短時間の授業体験

「やったことがある」「知っている」という経験は、自信と安心につながります。

家庭との連携が見通し支援のカギを握る

家庭でもできる「見通し支援」の工夫

  • ホワイトボードに一日の予定を書く
  • 子どもと一緒に予定表を作成(絵やシールなどで)
  • お出かけ前に「どこへ行くか」「何時に帰るか」を共有
  • 写真や動画でイベントの事前学習
  • 終わったあとに「できたね」「次は?」と親子で振り返る

日常の中でのこうした関わりが、自然に見通し力を育てます。

園や学校との情報共有の重要性

以下のような情報を園・学校へ共有することで、よりよい支援につながります。

  • 「視覚情報があると理解しやすい」
  • 「予告をすると落ち着いて取り組める」
  • 「終わりが分からないと不安になる」

逆に、学校の活動内容や進め方も事前に把握しておくことで、見通し支援をより丁寧に行えます。

見通しを育む支援の実例と成果

ケーススタディ Aくん(年長・自閉スペクトラム症)の就学支援

課題: 新しい場所で固まってしまう不安

支援内容:

  • 小学校の写真を使った事前説明
  • 活動スケジュールの視覚提示
  • ランドセルを使った通園体験
  • 模擬授業(1時間目、給食など)

成果:
就学後も大きな混乱なくスタートでき、保護者からも「安心して入学できた」との声。

Bちゃん(年中・ADHD)の集団活動への参加支援

課題: 集団活動の流れがつかめず立ち歩いてしまう

支援内容:

  • 「始まり→途中→終わり」のカード提示
  • 活動中に「今はここだよ」と指差しで案内

成果:
流れを理解し、落ち着いて活動に参加できるように。

Cくん(年中・発語なし)の就学準備支援

課題: 言葉での理解が難しく、予定が分からないと不安で泣き出してしまう

支援内容:

  • 絵カードや写真を使った一日のスケジュール提示
  • 活動の始まりと終わりを視覚的に伝える支援
  • 好きな活動(ブロック・水遊び)をカードで選べるように支援
  • 小学校の写真や動画で登校や授業の流れを事前学習

成果:
活動の見通しが持てるようになり、不安から泣く場面が減少。就学説明会にも落ち着いて参加でき、保護者からも「安心して準備ができた」との声。

「見通しをもつ力」は未来へのパスポート

「見通しをもつこと」は、子どもにとって心の安全基地であり、自信をもって社会に踏み出すための土台です。

児童発達支援では、以下のような視点が求められます。

  • 子どもの発達特性に合わせた視覚支援
  • 段階的な環境設定と練習
  • 家庭・園・学校との連携

「自分で分かる」「準備できる」「安心して行動できる」経験の積み重ねが、子どもたちの安心につながります。

一人ひとりのお子さんに寄り添いながら、明日への一歩を共に進めていきましょう。

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