こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
児童発達支援の現場では、日常生活の中で「衣服」や「身の回りの物」をめぐる困りごとに数多く出会います。
服を着ることを極端に嫌がったり、靴下や帽子に触れただけで強く拒否したりする姿を見て、支援者や保護者の方が戸惑うことも少なくありません。
こうした様子は、しつけや性格の問題として捉えられがちですが、その背景には感覚過敏という特性が関係している場合があります。
お子さんにとっては、私たち大人がほとんど意識しない刺激が、日常的に強い不快感や苦痛として感じられていることがあるのです。
感覚過敏とは何か

感覚過敏とは、触覚や聴覚、視覚、嗅覚、味覚といった感覚刺激を、一般的な強さ以上に強く受け取ってしまう状態を指します。
衣服や身の回りの物に関して特に関係が深いのは、肌に直接触れることで生じる触覚や、締め付け・重さなどを感じる固有感覚、さらに暑さ寒さといった温度に関する感覚です。
例えば、タグが首元に触れる感覚や、縫い目が肌に当たる刺激、ウエストや袖口のわずかな締め付けなどは、多くの大人にとっては「少し気になる程度」で済むことがほとんどでしょう。
しかし、感覚過敏があるお子さんにとっては、それらが一日中続く強いストレスとなり、「逃げたい」「脱ぎたい」という気持ちにつながることがあります。
重度障害のあるお子さんや、発語が難しいお子さんの場合、この不快感を言葉で説明することが難しいです。
そのため、服を脱ぐ、泣く、体を硬くする、叩くといった行動として表れることがあります。
こうした行動は問題行動ではなく、「つらい」「耐えられない」というサインであると理解することが重要です。
感覚過敏があるお子さんにとっての衣服のつらさ

あるお子さんは素材のチクチク感に強く反応し、別のお子さんは服の重さや圧迫感に苦しさを感じることがあります。また、汗をかくことで刺激が増幅され、時間が経つにつれて不快感が強まるケースもあります。
このような状態で「毎日着なければならない服」を身につけることは、お子さんにとって常に我慢を強いられている感覚に近いものです。
その結果、登園前から疲れ切ってしまったり、生活全体への意欲が低下したりすることもあります。
衣服への拒否は、単なる一場面の問題ではなく、生活の質全体に関わるテーマとして捉える必要があります。
衣服選びで大切にしたい考え方

感覚過敏があるお子さんの衣服選びでは、「一般的に良いとされるもの」よりも、「その子にとってどう感じるか」を基準にすることが大切です。
柔らかく肌あたりのよい綿素材やガーゼ素材は比較的受け入れやすいことが多く、縫い目が目立たない構造やタグのない仕様も不快感を減らす助けになります。
サイズについても、成長を見越して大きめを選ぶことが必ずしも良いとは限りません。
布が余って肌に当たる感覚が刺激となる場合もあるため、適度に余裕がありつつ、だぶつきすぎないサイズ感を探っていくことが重要です。
靴下や下着は特に感覚過敏が出やすい部分です。
どうしても難しい場合には、「無理に身につけさせる」ことよりも、「別の選択肢を探す」「その時間帯だけ省く」といった柔軟な対応も支援の一つです。
身の回りの物への配慮

衣服以外にも、帽子や上着、靴、寝具など、身の回りには感覚刺激を伴う物が多くあります。
帽子を被ることが難しいお子さんには、いきなり着用させるのではなく、触って確かめる時間を設けたり、必要な場面だけ短時間使用したりする工夫が考えられます。
寝具についても同様で、重さのある布団や毛布が安心感につながるお子さんもいれば、軽いタオルケットの方が落ち着くお子さんもいます。
支援者として大切にしたい視点

強い不快感を我慢させ続けることは、お子さんの安心感を損ない、信頼関係に影響を及ぼすこともあります。
まずは、お子さんが感じているつらさを理解し、環境を調整することで負担を減らすことが支援の出発点になります。
発語がないお子さんに対しては、表情や体の緊張、行動の変化といった非言語的なサインを手がかりにしながら関わります。
衣服を選ぶ際に実物を見せて反応を確かめるなど、視覚的な選択肢を用意することも有効です。
「嫌がった」という事実を否定せず、「嫌だったんだね」と受け止める姿勢が、お子さんの安心につながります。
エピソード

Aちゃんは、毎朝の着替えの時間になると激しく泣き、支援者も保護者の方も困り果てていました。
詳しく様子を観察すると、特定の服の首元やタグに触れた瞬間から表情がこわばることが分かりました。
タグを外し、素材を見直し、サイズを調整したところ、泣かずに腕を通せる日が少しずつ増えていきました。
この変化は、お子さんを「頑張らせた」結果ではありません。つらさを減らしたことで、本来持っていた力が発揮された結果だと言えるでしょう。
まとめ

感覚過敏が強いお子さんにとって、衣服や身の回りの物は、日常の中で常に向き合わなければならない刺激です。その感じ方は外からは見えにくく、理解されにくいことも多いですが、拒否や不安として表れる行動には必ず理由があります。
無理に合わせさせるのではなく、お子さんの感じ方を尊重し、環境を調整していくこと。その積み重ねが、お子さんの安心感や自己肯定感を育み、生活全体の安定につながっていきます。
FAQ(よくある質問)

Q1. 少しずつ慣れさせた方がよいのでしょうか?
A. 慣れることで楽になる場合もありますが、強い不快感がある状態で無理に続けると逆効果になることもあります。まずは刺激を減らし、安心できる状態を作ることを優先します。
Q2. すべてお子さんの好みに合わせても問題ありませんか?
A. 安全や健康に配慮しながら、「どうすれば負担を減らせるか」を一緒に考えていくことが大切です。完全に合わせるかどうかではなく、折り合いの付け方を探る視点が重要です。
Q3. 発語がないお子さんの好みはどう判断すればよいですか?
A. 表情や体の動き、拒否や受け入れの反応を丁寧に観察します。実物を見せて選んでもらうなど、視覚的な方法も有効です。
Q4. 保護者の方と意見が合わない場合はどうすればよいですか?
A. お子さんの具体的な反応を共有し、「困りごとを減らすための工夫」という視点で伝えることで、共通理解につながりやすくなります。
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