児童発達支援の現場では、発語がない、またはことばがとても少ないお子さんと日々関わっています。
その中でよく耳にするのが、
この子は何がしたいのか分かりにくい
選ばせようとしても反応がない
という声です。
しかし、ことばが少ない・発語がない=気持ちや考えがないわけでは決してありません。多くのお子さんは、「選びたい」「決めたい」「自分の気持ちを伝えたい」という思いを、別の形で表そうとしています。
今回は、発語がないお子さんの「選ぶ」を支える視覚支援についてお伝えします。
また、障害の重いお子さんや、反応がとても小さなお子さんへの関わりも含めて考えていきます。
「選ぶ」ことの意味

私たち大人は日常的に選択をしています。
何を食べるか、どこに行くか、どの順番でやるか……など。
その一つひとつが、「自分で決めた」という感覚につながっています。
お子さんにとっての「選ぶ」も同じです。それは将来の自立のためだけでなく、「自分の気持ちが尊重されている」と感じるための、とても大切な経験です。
なぜ視覚支援が有効なのか

ことばによる説明は、目に見えない情報です。
発語がない、理解に時間がかかるお子さんにとっては、聞いただけではイメージしにくいことも多くあります。
視覚支援は、
- 今、何が選べるのか
- 選ぶとどうなるのか
- 選択肢はいくつあるのか
を、目で見て分かる形にする支援です。
視覚情報は情報が消えにくく、繰り返し確認できるため、不安を減らし、落ち着いて選ぶことにつながります。
「選べない」のではなく「選び方が分からない」

選択場面で反応がないと、「この子は選べない」と感じてしまうことがあります。しかし実際には、
- 選択肢が多すぎて判断できない
- どれも同じに見えて困っている
- 選ぶ経験そのものが少ない
といった理由で、選び方が分からないだけの場合も少なくありません。
まずは「選ぶってこういうことなんだ」とわかる経験を、視覚支援を通して積み重ねていくことが大切です。
視覚支援を使った「選ぶ」のサポート

写真・実物を使った選択
最初の段階では、イラストよりも写真、写真よりも実物の方が分かりやすいことが多くあります。
例えば、おやつを選ぶ場面では、実際のお菓子を2つ並べて提示します。
お子さんが、
- 視線を向ける
- 手を伸ばす
- 体を少し傾ける
といった反応を示したら、それを「選んだ」として解釈します。
選択肢は少なく、はっきりと
最初からたくさんの中から選ばせる必要はありません。2択程度から始め、成功体験を積み重ねていきます。
また、色や大きさ、位置がはっきり違うことで、選択しやすくなるお子さんもいます。
さらに、「どっち?」と急かさず、ゆっくり待つことも大切な支援です。
「選んだ結果」をすぐに経験する
選んだ後に何も起こらないと、「これでよかったのかな?」と混乱してしまいます。選択のあとは、すぐに結果が分かるようにします。
障害の重いお子さんの「選ぶ」

障害の重いお子さんの場合、反応がとても小さく、見逃されやすいことがあります。
しかし、
- 目の動き
- 表情の変化
- 筋緊張のわずかな変化
なども、大切な意思表示です。
発語がなくても「伝わった」を積み重ねる

視覚支援の目的は、「正しく選ばせること」ではありません。
持つべき目的は、「自分の気持ちが伝わった」という経験を重ねることです。
うまくいかなかった日があっても、「今日は難しかったね」「また今度やってみよう」と関わり続けることで、安心して選択に向かえるようになります。
家庭と事業所で共有したい視点

家庭では、服や遊び、おやつなど、日常の中で無理のない選択場面をつくることができます。
事業所では、環境や提示方法を工夫しながら、選びやすい経験を積み重ねていきます。
うまく選べなかった日があっても、それを失敗とせず、「どんな提示なら分かりやすかったか」を一緒に考えることが大切です。
おわりに

発語がないお子さんの「選ぶ」は、とても静かで、気づきにくいことがあります。
しかし、その小さなサインの中には、確かな意思があります。
視覚支援は、その意思を引き出すための「特別な訓練」ではなく、日常を少し分かりやすくする工夫です。
児童発達支援事業所として、私たちはこれからも、
- 子どものサインを丁寧に受け取り
- 無理に急がせず
- 「伝わった」経験を大切にしながら
一人ひとりの「選ぶ」を支えていきます。
FAQ(よくあるご質問)

Q1. 全然選ばない場合はどうしたらいいですか?
A. 選ばないのではなく、選んでいてもサインがわかりにくい可能性があります。選択肢を減らしたり、イラストではなく実物で提示したりすることで反応が出ることがあります。
Q2. いつも同じものばかり選びます
A. 安心できる選択肢を選んでいる場合があります。無理に変えず、少しずつ新しい選択肢を混ぜていきます。
Q3. 間違った方を選んだら訂正した方がいいですか?
A. 基本的には尊重します。「選んだ結果」を経験すること自体が大切です。
Q4. 家庭と事業所でやり方が違ってもいいですか?
A. 大きな考え方が共有できていれば問題ありません。支援の違いを伝え合うことが支援の幅を広げます。
Q5. 視覚支援はいつまで続けますか?
A. 必要な間は続けて大丈夫です。視覚支援は成長を妨げるものではなく、理解を助ける手段です。視覚支援は甘えなどではないため、必要な間は続けていて大丈夫です。
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