食事の時間は、お子さんにとって生きるために欠かせない時間であると同時に、楽しさや安心、人との関わりを感じられる大切な生活場面です。
児童発達支援の現場では、
- 食事介助が必要なお子さん
- 自分で食べることが難しいお子さん
- 食事に強い不安やこだわりのあるお子さん
と日々向き合っています。
「ちゃんと食べさせなければ」「残さず食べてほしい」という大人の思いが強くなりやすい場面でもありますが、食事は訓練の時間ではなく、心地よい経験の積み重ねであるという考え方がとても大切です。
食事が「大変な時間」になりやすい理由

食事の場面では、姿勢を保つ力、口や舌・顎の細かな動き、食べ物の感触や匂いへの感覚処理、そして次に何が起こるかという見通しなど、たくさんの力が同時に求められます。
特に、筋緊張の調整が難しい、感覚の過敏さや鈍さがある、医療的ケアが必要といったお子さんにとって、食事は心身ともに大きな負担になることがあります。
「食べない」「口を閉じる」「吐き出す」といった行動の背景には、不安や疲れ、怖さといった気持ちが隠れていることも少なくありません。
まず大切にしたい視点

食事介助を考える上で、私たちが大切にしたいのは、「どれだけ食べられたかより、お子さんにとってどんな時間だったか」という視点です。
量やスピードだけを目標にすると、食事の時間が苦しいものになりやすくなります。
一方で、「安心して座れた」「嫌がらずに口を開けられた」といった小さな経験は、次の一歩につながる大切な土台です。
楽しい食事時間をつくる具体的な工夫

① 安定した姿勢を最優先に
楽しく食べるためには、まず体が安定していることが欠かせません。
椅子や車椅子の高さを調整したり、足が床や足台につくようにしたり、必要に応じてクッションやタオルで体を支えます。
姿勢が安定すると、口や手に意識を向けやすくなり、不安も軽減されます。
② 食具・食器を子どもに合わせる
スプーン一つでも、
- 重さ
- 大きさ
- 口当たり
によって、食べやすさは大きく変わります。
- 口が開きにくい子には小さめのスプーン
- 握りにくい子には太めの持ち手
など、その子に合った道具選びが「できた」につながります。
③ 一口の量とペースを大切に
大人のペースで次々に口に運ぶと、子どもは追いつけず、不安が高まりやすくなります。一口の量を少なめにし、飲み込んだ様子や表情を確認しながら進めることで、安心して食事に向かうことができます。
「待つ」ことは、楽しい食事時間をつくる大切な支援です。
④ 声かけは安心を優先
「早く食べよう」「まだ残ってるよ」という声かけは、プレッシャーになることがあります。
おいしいね
今、もぐもぐしてるね
ちゃんと見てるよ
結果ではなく、今の様子を伝える声かけが、安心感につながります。
障害の重いお子さんの食事介助

障害の重いお子さんの場合、
- 全介助が必要
- 経管栄養と併用している
- 食べられる量が限られている
といったケースもあります。
この場合の目標は、「自分で食べること」ではなく、「食事の時間に心地よく参加すること」です。
- 匂いを感じる
- 食具に触れる
- 口元にスプーンが来るのを待つ
こうした一つひとつの経験が、その子なりの食事参加です。
発語のないお子さんとの食事時間

発語がないお子さんでも、食事中にはたくさんのサインを出しています。
- 口を閉じる・開ける
- 顔を背ける
- 視線を向ける
- 体をこわばらせる
これらはすべて、大切な意思表示です。
- 嫌なサインが出たら一度止める
- 受け取れたことを言葉にする
- 同じ流れを繰り返す
ことで、「伝わった」「分かってもらえた」という安心感が育ちます。
「食べられた」よりも「食事に関わることができた」

- 今日は一口だった
- 触れただけだった
- 最後まで座っていられた
それでも、それは立派な成長です。
「食べられなかった」ではなく、
ここまでできた
今日はここがしんどかった
と捉える視点が、次につながります。
家庭と事業所で共有したい視点

家庭では無理をしすぎず、事業所では安心して試せる環境を整えること、それぞれの場での役割を大切にします。
うまくいかない日があっても責めず、「今日はこれが嫌だった」「ここは落ち着いていた」などの小さな気づきを共有することが、お子さんに合った支援につながります。
おわりに

食事介助が必要な子どもたちにとって、食事の時間は、ときに不安で、ときにとても疲れる時間でもあります。
食べた量や結果だけに目を向けるのではなく、その子がその時間にどんな気持ちで過ごせたかを大切にしながら、
- 無理をさせず
- その子のペースを尊重し
- 小さな一歩を一緒に喜びながら
児童発達支援事業所として、私たちはこれからも、子どもたち一人ひとりの食事の時間に寄り添っていきます。
FAQ(よくあるご質問)

Q1. 全然食べない日があっても大丈夫ですか?
A. 体調や気分によって食べられない日は誰にでもあります。無理に食べさせるより、安心して過ごせたかを大切にします。
Q2. 食べこぼしが多くて気になります
A. 食べこぼしは学びの途中でよく見られます。姿勢や食具の調整で改善することもあります。
Q3. 介助すると甘えになりますか?
A. 必要な介助は甘えではありません。安心できる経験が、自立への土台になります。
Q4. 発語がなくても満腹や嫌な気持ちは分かりますか?
A. 表情や体の動きから多くのサインを受け取ることができます。一つひとつを大切に見ていきます。
Q5. 家と事業所でやり方が違ってもいいですか?
A. 大きな方向性が共有できていれば問題ありません。違いを伝え合うことが支援の幅を広げます。
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