お子さんが選ぶ「今日の気分」シール活動

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

目次

はじめに

朝、登所したばかりのお子さんの様子はさまざまです。
にこにこ笑顔のお子さんもいれば、ちょっぴり眠そうなお子さん、なんだか落ち着かないお子さん――。

気持ちを言葉にすることは、大人でも難しいときがあります。
発達特性のあるお子さんや、まだ言葉が十分に育っていないお子さんにとっては、なおさらです。

そこで、毎朝の活動のひとつとして「今日の気分」シール活動を取り入れるのはどうでしょうか。
お子さん自身が、その日の気持ちに近いシールを選び、自分の名前カードや台紙に貼るというシンプルな取り組みです。

この記事では、活動のねらいや進め方、お子さん一人ひとりに合わせた工夫、ご家庭での応用までを、まとめてご紹介します。

「今日の気分」シール活動とは

台紙やボードに、その日の気持ちを表すシールを貼っていく活動です。

  • にこにこ笑顔
  • 困った顔
  • 怒っている顔
  • 泣いている顔
  • ねむそうな顔
  • わくわくしている顔

表情イラストを使うことが多いですが、色だけで気持ちを表すバージョン(赤・青・黄色・緑)や、好きなキャラクターを使うバージョンも用意します。

お子さんが「今、自分はこんな気持ちかな」と感じたシールを、台紙にぺたっと貼る

たったそれだけの活動ですが、毎日続けることで、お子さんと職員、そしてお子さん自身の気持ちとの間に、たしかな橋がかかっていきます。

活動のねらい

1. 自分の気持ちに気づく時間をつくる

気持ちを言葉にする前に、「今の自分はどんな感じかな」と立ち止まる時間を持つことは、お子さんにとってとても大切な経験です。
シールという目に見えるかたちで気持ちを表すことで、お子さんは少しずつ「自分の中にある感情」と出会っていきます。

2. 気持ちを伝える方法を増やす

発語が少ないお子さんや、言葉で気持ちを表すのが難しいお子さんにとって、シールは大切な「ことばの代わり」になります。
「今日はちょっと困っているよ」「今日はうれしいよ」というメッセージが、一枚のシールでやさしく伝わります。

3. 一日の見通しを立てやすくする

朝の気分を確認することは、お子さんにとっても職員にとっても、「今日はどんな一日にしようかな」と考える第一歩です。
落ち着かない日はゆっくりめのスケジュールに、元気な日は少しチャレンジを増やしてみる――そんな調整のきっかけにもなります。

情緒の特性に寄り添う活動として

急に大きな声が出てしまったり、場面の切り替えに時間がかかったりするお子さんもいます。
 こうした姿は外からは見えにくく、本人の中で気持ちが追いつかない瞬間でもあります。
「今日の気分」シール活動は、そんな見えにくい揺れを、お子さん自身がそっと表に出すきっかけになります。

「今日は怒っている顔のシールを選んだね」と職員がやさしく受け止めることで、お子さんは「気づいてもらえた」という安心を持つことができます。

小学校に上がると、こうした情緒面の特性に応じた支援学級が用意されている場合もあります。
日々の小さな「気持ちの確認」は、その後の集団生活へとつながる土台にもなっていきます。

当事業所での進め方

  1. 朝の会の前に、シールコーナーへ
  2. 自分の名前カードを見つける
  3. その日の気分に合うシールを選ぶ
  4. ぺたっと貼って、職員にそっと見せる
  5. 職員は「今日は〇〇な気分なんだね」とやさしく言葉を返す

ポイントは、「正解」や「ふさわしい気分」を求めないこと。
怒っている顔を選んでも、泣いている顔を選んでも、そのすべてが今のお子さんの大切な気持ちです。

発語が少ない・重度の障害のあるお子さんへの工夫

  • シールの台紙を目の前に近づけて、視線で選んでもらう
  • 職員が手を添えて、一緒にシールを貼る
  • 色だけのシンプルなシール(赤・青・黄色)を使う
  • 触り心地の違うシール(つるつる・ふわふわ・ざらざら)を選択肢に加える
  • 顔写真を撮って、その日の表情を台紙にプリントする

「貼る」ことそのものが難しいお子さんには、シールに触れたり、視線を向けたりする時間を「選んだ」と受け止めます。「いる・見る・感じる」も、立派な気持ちの表現です。

ご家庭で取り入れるヒント

特別な準備はいりません。

  • 100円ショップで好きなシールを選んでくる
  • カレンダーやノートに、その日の気分のシールを一枚貼る
  • 寝る前に「今日のシールはこれだったね」と振り返る

おうちで続けることで、お子さんの一週間の気持ちの波が、保護者の方にも見えやすくなります。「水曜日はいつも疲れているみたい」「金曜日は元気な顔が多いね」――そんな小さな気づきが、暮らしのリズムづくりにも役立ちます。

FAQ(よくある質問)

Q1. 毎日同じシールを選びます。気持ちが変わっていないということでしょうか?

A. 同じシールを選び続けることは、お子さんにとって「これが安心の選択」になっている場合もあります。無理に違うシールを選ばせる必要はありません。安心して選べる場所があること自体が、何よりの土台です。

Q2. 怒った顔や泣いた顔を毎日選びます。心配です。

A. ネガティブな気持ちを表現できていること自体が、大切な力です。シールを通して「今、しんどいよ」と発信できているお子さんに、職員はそっと寄り添い、必要に応じて活動の量や内容を調整していきます。気になる場合は、ご相談ください。

Q3. 発語のないお子さんは、本当に自分で選べているのでしょうか?

A. 視線が動いた方向、手が伸びた先、表情の変化――どれもお子さんの「選択」です。職員は、複数のシールをゆっくり提示し、お子さんの反応を丁寧に読み取りながら、一緒に決めていきます。

Q4. 重度の障害のあるお子さんは、どのように参加していますか?

A. 職員が手を添えて貼る、台紙を顔の近くに持っていく、触り心地の違うシールを用意するなど、その子に合わせた関わり方をしています。シールに視線を向ける、触れる、その瞬間ひとつひとつが、大切な参加のかたちです。

Q5. きょうだいがいるご家庭でも取り入れられますか?

A. はい。ご家族みんなで取り組むのもおすすめです。「お父さんは今日にこにこだね」「お姉ちゃんはちょっと困った顔かな」と話題が広がり、ご家族の中での気持ちの共有がぐっと豊かになります。

おわりに

気持ちは、目に見えません。だからこそ、ぺたっと貼られた一枚のシールが、お子さんの今を映してくれます。

にこにこの日も、泣いている日も、ねむい日も。

そのすべてを受け止め、明日へつないでいく。

「今日の気分」シール活動が、お子さんと職員、そしてご家族にとって、小さなあたたかい習慣になっていけば嬉しいです。

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