ごっこ遊びで育てるコミュニケーション力

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

「お医者さんごっこ」「おままごと」「ヒーローごっこ」――。

大人からすると何気ない遊びに見えますが、ごっこ遊びはコミュニケーション力の土台をぐんぐん育てる、とても豊かな学びの時間です。

児童発達支援の現場でも、ごっこ遊びは表情・ことば・動作・気持ちのやり取りを自然に引き出してくれる大切な活動として位置づけられています。

一方で、「うちの子はまだセリフが言えない」「ごっこ遊びがうまく続かない」と感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ごっこ遊びがお子さんのコミュニケーション力をどのように育てるのかを整理しながら、発語が難しいお子さんや重度の障害のあるお子さんも一緒に楽しめる工夫について、実践的にご紹介します。

目次

ごっこ遊びが育てる3つの力

ごっこ遊びは、単なる「まねっこ」ではありません。
その中には、コミュニケーションの本質が詰まっています。

1. 役割を共有する力

「今はお母さん役」「これはお医者さん」というように、お互いの役割を理解し合うことは、相手の立場に立って考える力の出発点です。

ことばで伝え合う前段階として、身ぶりや表情で「今はこういう場面ね」と共有できる経験は、後の会話力の土台になります。

2. 気持ちをのせる力

「痛いの痛いの飛んでいけ」「どうぞ」「いただきます」
ごっこ遊びには、日常よりも少しだけ大げさな感情表現がたくさん登場します。

「うれしい」「こわい」「かなしい」を遊びの中で安全に表現する経験は、自分の気持ちに名前をつける練習になります。

3. やり取りを続ける力

ごっこ遊びは、一人では完結しません。「次はどうする?」「じゃあ、こうしよう」と相手と交互に展開を作っていく中で、会話のキャッチボールの感覚が自然と育っていきます。

発達のペースに合わせた広げ方

ごっこ遊びは、年齢や発達のペースによって楽しみ方が変わります。いきなり複雑な設定に入らず、目の前のお子さんに合った段階から始めることが大切です。

見立て遊びから始める

積み木を電車に見立てたり、葉っぱをお皿にしたり。「これは〇〇のつもり」と、物を別のものに見立てる遊びは、ごっこ遊びの入口です。

大人が

保護者A

これ、おにぎりかな?

と一声かけるだけでも、イメージの世界がぐっと広がります。

短いやり取りから始める

最初から長いストーリーを作る必要はありません。

  • 「どうぞ」「ありがとう」
  • 「もしもし」「はーい」

この一往復を何度も繰り返すだけで、「伝わった」体験がしっかり積み重なります

小道具を少しだけ用意する

エプロン、帽子、電話のおもちゃなど、役割をイメージしやすい小道具があると、場面の切り替えがスムーズになります。作り込みすぎず、シンプルなほうが想像が広がりやすいお子さんも多くいます。

発語が難しいお子さん・重度のお子さんと楽しむ工夫

「セリフのやり取りができないから、ごっこ遊びは難しい」と感じる必要はありません。ごっこ遊びの核は「場面を共有する」ことであって、ことばはその一部にすぎないからです。

身体の動きでやり取りする

  • 大人が食べるまねをして、お子さんの口元にスプーンを運ぶ
  • 布をかけて「ねんねしようね」と一緒に目を閉じる
  • 「いってらっしゃい」と手を振り合う

視線や触れ合い、身体の向きの変化そのものが、立派なやり取りになります。

AACや絵カードを「役のセリフ」として使う

YES/NOカードや絵カードを役のセリフ代わりにするのもおすすめです。「お医者さん役のときはこのカード」と決めておくと、ことばを介さずに役割を交代できます。

小さなサインを受け止める

まばたき、口元のわずかな動き、視線の止まる方向など、そうした小さなサインを「うん、そうだね」と受け止めることで、ごっこ遊びは成立します。

「反応が小さい=参加していない」ではなく、「こちらがまだ読み取れていないだけ」と捉える姿勢を大切にしたいところです。

見えにくい情緒の揺れにも配慮する

ごっこ遊びは楽しい一方で、場面の切り替えがむずかしい時間でもあります。

遊びが盛り上がった直後に片付けとなると、気持ちがうまく切り替わらず、急に大きな声が出たり、涙が出たりするお子さんもいます。

こうした姿は「わがまま」ではなく、気持ちを切り替えにくい特性――いわゆる「情緒」の面の揺れが背景にあることも少なくありません。
「多動」のように外から見えやすいものとは違い、内側で起きている揺れは気づかれにくいのが特徴です。

  • 終わりの時間を先に予告しておく
  • 「あと3回やったらおしまい」と回数で区切る
  • 「おやすみなさい」で終わるなど、遊びの“終わり方”自体をごっこの中に組み込む

こうしたひと工夫があるだけで、お子さんも安心して遊びに入り込めます。

家庭と支援現場で共有したいこと

  • 同じキャラクターや小道具を家庭と事業所で共有する
  • 「今日はこの役が楽しそうだった」を1行でもメモに残す
  • うまくいかなかった日は、場面・時間・疲れ具合をふり返る

完璧を目指さず、1日1回「伝わった」瞬間を重ねていくことが、お子さんのコミュニケーション力の確かな土台になります。

まとめ

ごっこ遊びは、セリフの上手さを競う時間ではありません。

役を共有する

気持ちを表現する

やり取りを続ける

この3つの体験が、お子さんの伝える力・受け取る力をゆっくり育てていきます。

発語の有無や障害の程度にかかわらず、それぞれのペースで楽しめるのが、ごっこ遊びの一番の魅力です。

FAQ(よくあるご質問)

Q1. ごっこ遊びに興味を示しません。どうすればいいですか?

A. まずは見立て遊びから始めてみてください。
お子さんの好きなおもちゃを、大人が別のものに見立てて遊ぶ姿を見せるだけでもOKです。興味が向いた瞬間を待つことが大切です。

Q2. セリフが出ないお子さんでも楽しめますか?

A. はい、楽しめます。ごっこ遊びの本質は「場面を共有すること」です。
身ぶり、表情、絵カードなど、お子さんが使える手段でやり取りが成立すれば、それは立派なごっこ遊びです。

Q3. 遊びの終わりに毎回癇癪を起こしてしまいます。

A. 気持ちを切り替える難しさが背景にあるかもしれません。
「終わりの予告」「回数で区切る」「遊びの中に終わり方を組み込む」などの工夫を試してみてください。

Q4. 重度の障害のあるお子さんでも、ごっこ遊びはできますか?

A. できます。視線・表情・筋緊張の変化など、小さなサインを“役のセリフ”と捉え直すことで、ごっこの世界に一緒に入ることができます。

Q5. 親がごっこ遊びが苦手です…

A. 無理に役になりきる必要はありません
実況中継のように「今、お茶を注いでいるね」「おいしそうだね」とことばを添えるだけでも、十分にやり取りが成立します。

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