「失敗体験」を活かすお子さんとの関わり方

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

児童発達支援の現場では、

保護者C

うまくいかなくて泣いてしまった

保護者A

失敗してから、その活動を嫌がるようになった

というご相談をよくいただきます。

お子さんにとって「失敗」は、ときに自信を大きく揺らす出来事です。

けれど同時に、関わり方しだいで「次につながる経験」にも変わっていきます。

今回は、失敗体験をどう受けとめ、どう次に活かしていくかを、重度のお子さんや発語が難しいお子さんへの配慮も含めてお伝えします。

目次

「失敗」はお子さんにとってどんな経験か

大人にとっての「失敗」と、お子さんにとっての「失敗」は、少し意味合いが違います。

  • できると思っていたのにできなかった
  • 頑張ったのに褒めてもらえなかった
  • 周りと同じようにできなかった

こうした体験は、お子さんの中で「自分はだめなのかも」という気持ちにつながりやすく、次の挑戦へのブレーキになります。

特に、急な奇声や癇癪、場面の切り替えの難しさといった情緒の揺れが見られるお子さんの場合、「失敗した瞬間」にその揺れが一気にあふれ出すことがあります。
外からは「突然キレた」ように見えても、背景には「うまくいかなかった悔しさ」や「どうしたらよいかわからない混乱」が隠れていることが少なくありません

まずは「失敗の瞬間」を責めない

失敗体験を活かす第一歩は、その瞬間に評価やアドバイスを重ねないことです。

  • 「だから言ったでしょ」
  • 「次はもっとこうしようね」
  • 「お兄さんなんだから泣かないよ」

こうした言葉は、大人としては励ましのつもりでも、お子さんにとっては「今の自分はダメだった」という追い打ちになりがちです。

まずは、

  • できなかった事実より、「やってみたこと」を先に認める
  • 泣いている・怒っている気持ちを、言葉にして返す
  • 落ち着くまでは、次の提案を急がない

この3つを意識するだけで、失敗のあとの空気がやわらぎます。

「失敗を活かす」ための関わりの順番

失敗体験は、その場で挽回するものではなく、少し時間をおいてから一緒にふり返るものです。

① 気持ちを落ち着ける

まずは安全な場所に移動したり、刺激を減らしたりして、身体と気持ちをクールダウンします。
飲み物を一口、深呼吸を一緒に、などの小さなリセットが効果的です。

② 気持ちを言葉にする

「悔しかったね」「うまくいかなくてびっくりしたね」と、感情を短い言葉で代弁します。
発語が難しいお子さんには、表情カードやイラストを指さしながら伝えると届きやすくなります。

③ 状況を小さく整理する

落ち着いてから、「何をしようとしたか」「どこでつまずいたか」を、やさしい言葉や写真で一緒に確認します。
責めるためではなく、「次にどうするか」の材料にするための整理です。

④ 次の一歩を小さくする

同じ課題をいきなり再挑戦させるのではなく、難しさをひとつ下げた形で提示します。

  • 手順を1つ減らす
  • 見本を先に示す
  • 時間や量を短くする

「もう一度やってみようか」ではなく、「今度はここだけやってみようか」の感覚です。

発語が難しいお子さん・重度のお子さんへの配慮

言葉でのやり取りが難しいお子さんほど、「失敗」の悔しさや戸惑いは、大人には見えにくい形で表れます。

  • 視線をそらす
  • 体をこわばらせる
  • 急に動きが止まる
  • 普段より呼吸が浅くなる

こうしたサインを「うまくいかなかったときの合図」として、支援者側が読み取れるようにしておくことが大切です。

また、重度のお子さんの場合、「失敗しないように先回りする」関わりが続くと、挑戦そのものが減ってしまいます。

  • 選ぶ場面を少しだけ残す
  • できる部分だけお子さんにお願いする
  • 一緒にやった結果を「できたね」と共有する

完璧にできたかどうかより、「一緒に取り組んだ」という事実を積み上げていきます。

情緒の揺れが大きいお子さんへの工夫

情緒面での揺れが大きいお子さんにとって、失敗は情緒が大きく動くきっかけになりやすい場面です。

  • 事前に「うまくいかないこともあるよ」と伝えておく
  • 失敗したときの「逃げ場」を決めておく(クールダウンスペースなど)
  • 「やめる」「休む」カードを使えるようにしておく

情緒の揺れは、多動のように外から見えやすい特性とは違い、気づかれにくいまま積み重なりがちです。

小学校では情緒面の特性に応じた支援学級が設けられていることもあり、園や事業所の段階から「失敗したときに安心できる仕組み」を育てておくことが、その後の学校生活にもつながっていきます。

家庭と事業所で共有したい視点

  • 「できた/できなかった」ではなく、「どこまでやれたか」で見る
  • 失敗したあとに使えた言葉やカードを、家庭でも使えるようにする
  • 一日の終わりに、うまくいかなかったことより「やってみたこと」を一緒にふり返る

家庭と事業所で同じまなざしを持てると、お子さんは「どこでも安心して挑戦していい」と感じやすくなります。

おわりに

失敗体験は、避けるものではなく、一緒にくぐり抜けていくものです。

「できなかった」の裏には、必ず「やってみた」があります。

その小さな一歩を、お子さんと一緒に見つけていけたらと思います。

FAQ(よくあるご質問)

失敗すると大泣きしてしまい、こちらもつらくなります。

まずは無理に泣き止ませようとせず、安全を確保して落ち着くのを待ってください。
気持ちが落ち着いてから、短い言葉で「悔しかったね」と返すだけでも、お子さんの受けとめ方はやわらいでいきます。

同じ失敗をくり返してしまいます。

くり返しは、お子さんが「まだ挑戦している」というサインでもあります。
同じ形で再挑戦させるのではなく、難しさを少し下げた課題に置き換えて、成功の感覚を取り戻すことを優先してみてください。

発語がないお子さんに、どう気持ちを確認したらいいですか?

表情カードや「YES/NO」のサイン、写真の指さしなど、言葉以外の手段を用意しておきます。
支援者側が「今、こわばったね」「ホッとしたね」と言葉にして返すことで、やり取りが成立していきます。

失敗させないようにしたほうが良いのでは、と感じてしまいます。

大きすぎる失敗は避けたほうが良い一方で、小さな失敗は大切な学びの機会です。
「失敗してもだいじょうぶな場」を用意したうえで、少しだけ挑戦の余地を残すバランスが理想です。

癇癪がひどく、ふり返りができません。

情緒の揺れが大きい日は、ふり返り自体をお休みしてかまいません。
後日、落ち着いているときに写真やイラストを見ながら、短く共有するだけでも十分です。

はぐちるの森は、こどもたちの明日を考えるブログ

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