こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
はじめに
けれども、その一歩はとても静かで、過ぎてしまうと忘れてしまいがちです。
「今日はくつ下を片方だけ自分ではけた」「いつもより1分長く座っていられた」。
そんな小さな挑戦こそ、お子さんが自分のペースで前に進んでいるしるしです。
この記事では、親子で取り組む「小さな挑戦」を、無理なく記録していく方法をご紹介します。
「小さな挑戦」とは

小さな挑戦とは、お子さんが今の力より少しだけ背伸びをして取り組むことすべてを指します。
上手にできたかどうかは関係ありません。
- いつもは通らない道を歩いてみた
- 苦手な音のする場所に、少しだけ近づけた
- 「いや」を、声や身振りで伝えられた
- スプーンを自分で持とうとした
できた結果ではなく、「やってみようとした」その気持ちに目を向けることが、記録の出発点になります。
記録するとどんないいことがあるのか
小さな挑戦は、その場では気づきにくいものです。記録に残すことで、見えにくかった成長がはっきりと形になります。
- 「前はできなかったけれどできるようになったね」と、振り返って比べられる
- お子さん自身が「できた」を見て、自信につながる
- ご家族や支援者の間で、同じ歩みを共有できる
- うまくいかない日があっても、長い目で見られる
記録は、お子さんを評価するためのものではありません。
一緒に歩いてきた道のりを、やさしく残しておくためのものです。
続けやすい記録の方法

記録というと、きちんと書かなければと身構えてしまいがちです。
けれども、続けられる形がいちばんよい形です。
大切なのは、量や正しさではなく「気負わず手をつけられること」。
ご家庭の生活リズムや、親御さんの得意なやり方に合わせて、無理なく選んでください。
ひとこと日記
1日1行で十分です。「今日できたこと」を、メモアプリやカレンダーに短く書きます。「いつ・何を・どんな様子で」の3つだけ意識すると、後から読み返したときに場面が思い浮かびやすくなります。
写真と動画で残す
言葉にしにくい瞬間は、写真や短い動画が効果的です。
後から見返すと、表情やしぐさの変化に気づけます。
月に一度、その月のお気に入りを数枚選んでアルバムにまとめると、振り返りがぐっと楽になります。
シールやスタンプ
挑戦できた日に、お子さんと一緒にシールを貼ります。
台紙が埋まっていく楽しさが、次への意欲にもつながります。
お子さん自身に貼る場所や種類を選んでもらうと、「自分でやった」という実感が生まれます。
シールを選ぶこと自体が、その日の小さな挑戦になることもあります。
台紙が1枚うまったら、好きな写真を飾るなど、小さなお祝いを添えるのもおすすめです。
「できたこと貯金」
小さなびんに、挑戦した数だけビーズや紙を入れていきます。
目に見えて増えていくと、成果を実感しやすくなります。
中身が貯まる音や、かさが増えていく様子は、文字がまだ読めないお子さんにも伝わりやすい記録です。
ビーズの色で気分を分けたり、ご家族みんなの分を一つのびんに入れたりと、ご家庭なりのアレンジも楽しめます。
発語が少ない・重度の障害があるお子さんへの工夫

記録の主役は、お子さんの表現すべてです。
言葉や動作がなくても、残せるものはたくさんあります。
- 視線が向いた先や、表情のゆるみを「挑戦のしるし」として書く
- 大人が手をそっと添えて一緒に取り組んだことを、そのまま記録する
- 体に力が入った、息づかいが変わったなど、小さな反応をメモする
- 「触れた・見た・感じた」時間そのものを、ひとつの挑戦と数える
できた・できないで線を引かず、お子さんがその場にいて何かを感じたこと自体を、大切な一歩として残していきましょう。
気持ちの揺れに寄り添いながら
こうした姿は、集団生活や日常の中での受け入れにくさ、切り替えにくさとして現れることがあり、その背景には情緒の側面が関わっていることも少なくありません。
多動のように外から見て分かりやすいものとは違い、目に見えにくい場合も多いものです。
記録の場面では、次のような関わりが助けになります。
- 挑戦の前に、始まりと終わりの合図を決めておく
- 「やる・見るだけ・休む」の3つから選べるようにする
- うまくいかなかった日も「やろうとしたね」と書き残す
- 泣いた日や怒った日も、気持ちが動いた記録として受け止める
ご家庭で続けるコツ

- 完璧を目指さず、書けない日があってよいと決めておく
- 夜のひととき、ご家族で記録を一緒に見返す
- お子さんが見える場所に、記録を1つだけ飾る
- 1週間に1回、「いちばんの挑戦」を選んでみる
記録は、続けること自体がひとつの挑戦です。
親御さんも、自分の「今日も残せた」を、そっとほめてあげてください。
記録を「次の一歩」につなげる

- うまくいった日の前後に、共通する条件(時間帯、場所、その日の体調)がないか探してみる
- つまずきが多い場面は、ハードルを一段下げて「もっと小さな挑戦」に分け直す
- 事業所や園の先生と記録を共有し、家庭と外での様子を重ねてみる
記録は、お子さんの「取扱説明書」を、親子で少しずつ書き足していく作業に似ています。
正解を探すのではなく、その子に合うやり方を一緒に見つけていく。
そんな気持ちで眺めると、毎日の記録が、より温かい時間に変わっていきます。
FAQ(よくある質問)

Q1. 毎日続けられる自信がありません。
A. 毎日でなくて大丈夫です。書けた日だけ残す形でも、十分に成長は見えてきます。続けることより、思い出したときに書ける気軽さを大切にしてください。
Q2. 何を「挑戦」と数えればよいか分かりません。
A. いつもと少し違う様子があれば、それが挑戦です。「初めて」「いつもより長く」「自分から」などの言葉を手がかりにすると、見つけやすくなります。
Q3. 発語のないお子さんの挑戦は、どう記録すればよいですか。
A. お子さんの視線、表情、体の動きを、大人が言葉にして残しましょう。「こっちを見ようとした」「力がふっと抜けた」など、感じ取ったことをそのまま書いて大丈夫です。
Q4. きょうだいと比べてしまい、落ち込みます。
A. 記録は、他のお子さんとではなく、過去のそのお子さん自身と比べるためのものです。1か月前の記録と見比べると、その子だけの歩みが見えてきます。
Q5. うまくいかない日が続くと、記録がつらくなります。
A. つらいときは、お休みしてかまいません。「今日は記録をお休みした」と書くのも、無理をしない大切な選択です。
おわりに

小さな挑戦は、ひとつずつ見ると、ほんのささやかなものかもしれません。
今日の「できた」を、ひとことでも残してみてください。
その一行が、明日のお子さんと親御さんの、やさしい支えになっていきます。
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