こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。
はじめに

朝の着替えの時間に、「この服はいや!」と泣いたり、着たばかりの服をすぐに脱いでしまったり。
そんな姿の背景には、感覚過敏という特性が隠れていることがあります。
特に触覚が敏感なお子さんにとって、服のタグやチクチクした縫い目、締めつけ感は、大人が思う以上に大きな不快や痛みとして感じられています。
この記事では、児童発達支援の視点から、感覚過敏のあるお子さんが安心して過ごせる衣服選びのポイントと、おうちでできる工夫をご紹介します。
「服のタグが痛い」の背景にあるもの

触覚が敏感なお子さんは、肌に触れるわずかな刺激を強く受け取ります。
大人には気にならないタグや縫い目も、本人にとっては「ずっと肌を刺され続けている」ような感覚になることがあります。
そのため、次のような姿が見られることがあります。
- 特定の服ばかり着たがり、新しい服を嫌がる
- タグや袖口、襟元をしきりに気にして触る
- 着替えの途中で泣いたり、その場から逃げたりする
- 靴下の縫い目やゴムの締めつけを嫌がる
こうした反応は「わがまま」ではなく、体からの正直なサインです。
まずは「この子には本当に痛いのかもしれない」と受け止めることが、支援の第一歩になります。
安心できる衣服選びのポイント

衣服そのものを見直すことで、日々の不快感を大きく減らすことができます。
- タグは切り取るか、タグのない(プリント表示の)衣服を選ぶ
- 縫い目が肌に当たりにくい、平らな縫製の下着や靴下を選ぶ
- 締めつけの少ない、ゆったりとしたサイズやウエストゴムのやわらかいものにする
- 綿など肌ざわりのやさしい、通気性の良い素材を選ぶ
- 新品はごわつきやすいため、一度洗ってやわらかくしてから着る
お子さんによって「心地よい」と感じる素材や形は違います。
いくつか試しながら、本人が落ち着いて過ごせる一着を一緒に見つけていきましょう。
おうちでできる着替えの工夫

衣服選びに加えて、着替えの場面そのものを整えることも大切です。
- 着替える順番を絵カードや写真で示し、次に何をするか見通しを持てるようにする
- 「あと1回で終わり」など、終わりを具体的に伝えて安心につなげる
- 肌寒い時間を避け、部屋を暖かくしてから着替える
- 気に入った服は同じものを複数用意し、洗い替えでも安心できるようにする
- 着られたときには「自分でできたね」と、できた部分を具体的に認める
急かさず、お子さんのペースに合わせることが、着替えへの抵抗をやわらげる近道になります。
お子さん自身に「選ぶ」経験を

どの服を着るかをお子さん自身に選んでもらうことも、大切な関わりです。
- 2着を並べて「どっちにする?」と、選びやすい形で提示する
- 選べたときは「自分で決められたね」と、その気持ちを認める
- 言葉が難しいお子さんには、実物や写真を見せて指差しや視線で選べるようにする
自分で選べたという実感は、着替えへの前向きな気持ちや自己調整の力を育てます。強制するのではなく、選択肢として示すことを大切にしましょう。
情緒の視点から見た着替えの難しさ

着替えへの抵抗は、触覚の不快さだけでなく、気持ちの切り替えの難しさが重なっていることもあります。
着替えという場面の切り替えが苦手なお子さんには、遊びから着替えへ移るときに音楽やタイマーを使うなど、気持ちを整える手がかりを用意すると安心につながります。
発語が困難なお子さんへの配慮

言葉で「痛い」「いやだ」を伝えられないお子さんは、表情や行動で不快を表現します。
- 顔をしかめる、服を引っぱる、特定の服を投げるなどの様子を「サイン」として受け止める
- 「かゆい」「きつい」などの気持ちを、絵カードや実物を見せて選べるようにする
- 着替えの前に「これから着替えるよ」とジェスチャーや写真で予告する
小さなサインに気づき、代わりに言葉を添えて返していくことで、お子さんは「わかってもらえた」という安心を積み重ねていきます。
重度の障害があるお子さんとの関わり

自分で衣服を選んだり着たりすることが難しいお子さんにも、心地よさを大切にした配慮ができます。
- 肌に触れる下着やタオルは、やわらかく刺激の少ない素材を選ぶ
- 着替えの前に手足にそっと触れ、「今から着替えるよ」と体に伝える
- 締めつけや同じ姿勢による負担がないか、こまめに様子を確認する
体に触れるものを心地よく整えることは、お子さんが一日を穏やかに過ごすための大切な土台になります。
FAQ(よくある質問)

Q1. 気に入った服しか着ず、いつも同じ服になってしまいます。
A. 無理に替えるより、まずは同じ服を複数そろえて安心を保ちましょう。そのうえで、色違いや同じ素材の別の服から少しずつ選択肢を広げると、抵抗が減りやすくなります。
Q2. 保育園や学校の制服がどうしても着られません。
A. インナーに肌ざわりの良い綿の下着を着せる、タグを外す、家で少しずつ袖を通して慣らすなどの工夫が有効です。園や学校に特性を伝え、配慮をお願いすることも大切です。
Q3. 発語がなく、どこが不快なのか分かりません。
A. 服を触る場所や脱ぎたがるタイミングに注目してください。襟、袖口、ウエストなど、繰り返し気にする部分が不快のヒントになります。
Q4. 季節の変わり目に服を変えると、とても嫌がります。
A. 素材や厚みが急に変わることへの戸惑いが考えられます。数日前から新しい服を見せたり、短時間だけ着てみたりして、少しずつ慣らしていくと安心です。
Q5. きょうだいや周りから「わがまま」と見られてしまいます。
A. 感覚の感じ方には個人差があり、本人にとっては本当につらい刺激です。周囲にも「この子には強い刺激なんだ」と特性を具体的に伝えることで、理解と協力が得られやすくなります。
おわりに

「服のタグが痛い」という訴えは、お子さんが自分の感覚を伝えようとする大切なサインです。
その気持ちを受け止め、衣服や着替えの場面を少し整えるだけで、毎日の着替えはぐっと穏やかになります。
できないことを直そうとするより、お子さんが心地よく過ごせる方法を一緒に見つけていく。
その積み重ねが、お子さんの「安心して自分でいられる」時間を育てていきます。
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