感覚統合とお子さんの発達~おうちでできる感覚あそび5つとサポート方法~

こんにちは。
保育・療育専門家のコノアス合同会社 代表 柏木です。

目次

はじめに:感覚統合って何だろう?

「うちの子、音に過敏で耳をふさいでしまう」「服のタグが気になって脱いでしまう」「常に動き回っている」…このような行動、見覚えはありませんか?

これらは「感覚統合」という脳の機能が関係しているかもしれません
感覚統合とは、私たちの身体が受け取る様々な感覚情報を脳が整理し、日常生活で適切に反応できるよう調整する能力のことです。

お子さんの中には、この感覚統合がうまく機能せず、日常生活に困難を抱えている場合があります。
特に発達障害のあるお子さんでは、この感覚の処理に特有の特徴が見られることが多いのです。

この記事では以下のことをご紹介します。

  • 感覚統合の仕組みと重要性
  • 感覚統合がうまくいかない時の困りごと
  • 発語のないお子さんや重い障害のあるお子さんも含めた家庭でできる感覚あそび
  • 継続するためのコツと注意点

感覚統合の基本:7つの感覚系

感覚統合は、アメリカの作業療法士A.ジャン・アイレス博士によって提唱された概念です。私たちは一般的に知られる「五感」だけでなく、実は7つの感覚系を使って世界を理解しています。

  1. 視覚(見る)
  2. 聴覚(聞く)
  3. 触覚(触れる)
  4. 味覚(味わう)
  5. 嗅覚(匂いを感じる)
  6. 前庭覚(バランスや動きを感じる)
  7. 固有受容覚(筋肉や関節の位置を感じる)

特に最後の二つ、前庭覚と固有受容覚は、日常生活の中で意識することが少ないですが、子どもの発達において非常に重要な役割を果たしています。

感覚統合がうまくいかないとどうなる?

感覚統合に課題があると、お子さんは以下のような困りごとを抱えることがあります:

感覚過敏:特定の音、光、触感に過剰に反応する

例:掃除機の音で泣き出す、特定の食感を極端に嫌がる

感覚鈍麻:刺激に対して反応が少ない

例:痛みを感じにくい、名前を呼んでも振り向かない

感覚探求:特定の感覚刺激を常に求める

例:絶えず動き回る、強い刺激(回転、ジャンプなど)を好む

運動の不器用さ:協調運動が苦手

例:はさみが使いづらい、ボタンかけが難しい

発語のないお子さんや重い障害のあるお子さんの場合、これらの感覚の困りごとを言葉で表現できないため、行動や表情から読み取ることが大切です。
突然の泣き声や自傷行為が、実は感覚の不快感からくることもあります。

おうちでできる感覚あそび5選

感覚統合を促すには日常的な遊びが効果的です。特別な器具がなくても、ご家庭でできる感覚あそびをご紹介します。

1. バスタオルブランコ(前庭覚を育てる)

準備するもの

  • 大きめのバスタオル
  • 大人2人(安全確保のため)

やり方

  1. バスタオルの両端を大人2人がしっかり持ちます
  2. お子さんをタオルの中央に寝かせるか座らせます
  3. ゆっくりと前後・左右に揺らします

効果

前庭覚への刺激により、バランス感覚や姿勢保持能力の向上につながります。また、リズミカルな揺れは情緒の安定にも効果があります。

重い障害のあるお子さんへの配慮

お子さんの体の状態に合わせて、短時間から始めましょう。表情や呼吸を見ながら、心地よいと感じているか確認してください。

2. 感覚ボックス(触覚を育てる)

準備するもの

  • 衣装ケースや大きめの箱
  • 素材(米、乾燥豆、小麦粉、砂など)
  • 小さなおもちゃ

やり方

  1. ケースに選んだ素材を入れます
  2. お子さんが手や足を入れて感触を楽しめるようにします
  3. おもちゃを隠して探す「宝探し」にすると楽しさアップ

効果

様々な質感に触れることで触覚の発達を促し、触覚過敏の緩和にも役立ちます。

発語のないお子さんへの配慮

まずはお子さんの手を優しく素材に触れさせ、反応を見ながら進めましょう。嫌がる素材は無理強いせず、好みの素材を見つけることが大切です。

3. クッション山あそび(固有受容覚と前庭覚)

準備するもの

  • クッション、座布団、布団など
  • 滑り止めマット(あれば)

やり方

  1. クッションや布団を積み重ねて「山」や「障害物コース」を作ります
  2. 登る、転がる、くぐるなど全身を使って遊びます

効果

全身の筋肉や関節を使うことで固有受容覚が刺激され、姿勢制御や運動企画能力の向上につながります。

重い障害のあるお子さんへの配慮

介助しながら、クッションの上に寝かせたり、ゆっくり転がしたりと、お子さんの能力に合わせた遊び方を工夫しましょう。

4. ディーププレッシャー(触覚・固有受容覚)

準備するもの

  • 大きめのブランケットや布団

やり方

  1. お子さんを布団で優しく包みます
  2. 上から軽く圧を加えます(体重をかけすぎないよう注意)
  3. お子さんの様子を見ながら、心地よい圧を探りましょう

効果

全身への深い圧刺激は、多くのお子さんにとって安心感をもたらし、情緒の安定や感覚過敏の緩和に効果があります。

発語のないお子さんへの配慮

表情や呼吸、体の緊張状態などから快・不快のサインを読み取り、適切な圧を見つけてください。

5. リズム遊び(聴覚・前庭覚)

準備するもの

  • 音楽(お子さんの好きな曲)
  • マラカスやタンバリンなどの簡単な楽器(なくても可)

やり方

  1. 音楽に合わせて体を揺らしたり、手拍子をしたりします
  2. お子さんの手足を優しく持って、リズムに合わせて動かします
  3. 抱っこしながらダンスするのも効果的です

効果

リズム感覚の発達、聴覚と運動の協調性向上につながります。

重い障害のあるお子さんへの配慮

お子さんの手に振動の伝わる楽器を持たせたり、抱っこして一緒に揺れることで、感覚体験を共有できます。

感覚統合あそびを続けるコツと注意点

コツと注意点

  • お子さんのペースを尊重する:無理強いは逆効果になることも
  • 楽しさを第一に:遊びの中で自然に感覚を育みましょう
  • 短時間から始める:最初は5分程度から、少しずつ延ばしていきます
  • 成功体験を積み重ねる:できたことを具体的に褒めましょう

発語のないお子さんや重い障害のあるお子さんへの配慮

  • 非言語コミュニケーションを大切に:表情、視線、体の動き、呼吸の変化などから快・不快を読み取りましょう
  • 体調に合わせて調整:疲れやすいお子さんは特に注意しましょう
  • 介助者の体調も大切に:無理せず、できる範囲で継続することが大切です
  • 記録をつける:どんな遊びで良い反応があったか記録しておくと効果的です

専門家との連携

感覚統合の課題が日常生活に大きな影響を与えている場合は、専門家(作業療法士、理学療法士、感覚統合訓練の専門家など)に相談することも検討しましょう。

まとめ:お子さんの可能性を広げる第一歩

感覚統合はお子さんの発達の土台となる重要な能力です。感覚統合がうまく機能すると、お子さんは環境からの情報を適切に処理し、学習や日常生活のスキルを身につけやすくなります

特に発語のないお子さんや重い障害のあるお子さんにとって、感覚統合の支援は生活の質を大きく向上させる可能性があります。

言葉でのコミュニケーションが難しくても、感覚を通じた関わりは深いつながりを生み出します。毎日の生活の中に少しずつ感覚あそびを取り入れ、お子さんの「できた!」を一緒に増やしていきましょう。

お子さんのペースを尊重しながら、感覚統合の発達を支えることが、その子らしい成長への大切な一歩となります。

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